まさか自分が鬼の血を引く子どもだとは思っていなかったし、そもそもこの世界に、あやかしなんてものが本当に存在するとも思っていなかった。
 それに、自分があやかしを好きになるとも。

「見せません……天馬さん以外に。今は、その答えでもいいですか? もう少しだけ、待っていてください」

「仕方ないな。惚れた弱みだ。気長に待っていてやる」

 天馬が嬉しそうに笑みを浮かべているのが、胸に顔を埋めていてもわかった。彼の感情が耳元で高鳴る心臓から伝わってくる。

「これから、よろしくお願いします」

 鈴鹿はそう言って、天馬の広い背中に腕を回したのだった。

 了