「うーん、見つからない……」
「それらしきものはないですね……」

 俺とコーデリアは顔を見合わせた。

 地下道への入り口を探したのだが、どこにも見当たらない。

 俺の記憶によれば、入り口は隠し扉だったはず。
 ただ、その跡がどこにあるのか分からない。

 辺り一面ゴツゴツした剣山みたいな岩だらけで、隠し扉の場所を判別できないのだ。

「よし、もうちょっと分かりやすくするか」
「えっ」
「ちょっと一発ぶっ放すから、コーデリアは離れていてくれ」
「ぶっ放す? もしかしてベルダ様――」
「手っ取り早くいくよ――【爆裂】!」

 俺は地面に向かって、魔法の爆弾を叩きつけた。

「【爆風の指向性・水平一直線】」

 追加詠唱で爆発の種類をコントロールする。

 ごうっ……!

 指定した通り、爆風が同心円状に広がっていった。

 地面が大きくえぐれていく。

 前方100メートルくらいの場所に巨大な鉄扉で閉ざされた入口が見えた。

「お、あれだ」

 簡単に見つけられてラッキーだった。

「最初からこうすればよかったよ」
「……あいかわらず規格外の威力ですね、ベルダ様」

 コーデリアがジト目になった。

 俺はあらためて周辺を見回す。

 ……完全にクレーターになっていた。
 まずい、ちょっとやりすぎたな。

「自分でもちょっと驚いた」
「以前から思っていたのですが――」

 コーデリアが俺を見つめる。
 ジト目から、何かを探るような目つきに変わっていた。

「まるで自分の力を把握していないかのような物言いですね」
「……!」
「まるで――自分の力を自分で試しているような、まるで……」

 言いかけて、コーデリアは首を左右に振った。

「いえ、なんでもありません」

 何かに、勘づいているのか……?

 いや、今はまず目の前の道を進むことが先決だ。



「じゃあ、地下道を進んでいくぞ」

 と、俺たちは入り口から階段を降りていった。

「これは――かなり入り組んでいますね」
「ああ、一見複雑な迷宮だけど、脱出ルートは意外に単純なんだ」
「……それも調べて分かったことですか?」

 コーデリアが不審そうに俺を見る。

「い、いや、今のは、その……俺のカン、かな」
「カン……」
「俺は、ほら、歴戦の勇士だし、いちおう」
「まあ、それは否定しませんが……」
「俺を信じろ、コーデリア」
「もちろん」

 コーデリアが深くうなずく。

「あなたのことは信頼しております、ベルダ様」
「――本当に?」
「えっ」
「本当は、どう思ってるんだ? 俺のこと……」


 俺はコーデリアに思い切って聞いてみた。

 今後、彼女にはできるだけ俺を助けてほしい。
 そのためにも、信頼できる相棒になれるかどうか、今のうちから腹を割って話してみよう――。