「何かあったら、すぐに魔王様に報告しますよ」
言いながら、コーデリアの口元には微笑みが浮かんでいた。
『氷雪の女騎士』らしからぬ、温かな笑みが。
「なんだかんだ言ってついて来てくれるんだな、コーデリア」
俺も微笑みを返した。
「ありがとう」
「っ……!? あ、あたしは今言った通り、お目付け役ですからっ」
コーデリアの顔が赤くなった。
「勘違いしないでください!」
「もうすっかりツンデレだな」
「なんですか、『つんでれ』って?」
怪訝そうな顔をする彼女に、俺はますます笑みを深くした。
俺たちの移動は馬車だ。
魔法装置を色々と組みこんだ特別製らしく、全然揺れない。
電車や新幹線と同じくらいか、もっと快適だった。
俺とコーデリアは客車の中で駄弁っている。
クールで口数が少なそうな彼女だけど、話してみると意外と話題に乗ってくれる。
思ったほど、俺に対する好感度は低くないらしい。
あるいは彼女を助けたことで、多少なりとも好感度が上がったのか。
「……魔界って殺風景な場所だよな」
「なんですか、唐突に?」
「だって、さっきからずーっと荒野だろ。たまにサボテンを見かける程度で、後は赤茶けた地面ばっかり」
「あれはサボテンではありませんよ」
「えっ、そうなの?」
「食魔族植物です」
「食魔族……魔族を食っちゃうってこと?」
「近づきすぎると襲ってきます」
「物騒だな……」
「あと、地面のところどころにはモンスターの巣穴がありますので。無防備に近くを通ると襲いかかってきます」
「それも物騒だな……」
「上空にも雲に擬態した不定形モンスターが浮いていて突然襲ってきたりしますし」
「……魔界ってやっぱり物騒だな」
殺伐とした会話をしてしまった。
どうせなら、もうちょっとイチャラブな会話をしてみたかった……。
そうやって俺たちの道中は続く。
最初のイベントが起きる場所へと到着した。
小高い山のふもとである。
「これが――『ギガントロック』……!」
俺は息を飲んだ。