俺はあらためて『エルシド』のシナリオを頭の中で整理する。
長すぎて覚えていない部分もあるんだけど――。
『絶望の神殿』に関するエピソードは、だいたいこんな感じだ。
かつて魔界には強大な力を持つアイテムがあった。
神と魔王の最終戦争の折に使われたもので、魔王の力を封じる効果があるという。
魔王はそれを破壊しようと試みたが、どうしてもできず、『絶望の神殿』と呼ばれる場所にそのアイテムを封印した。
で、今でもその『絶望の神殿』にアイテムが封印されていて、それを巡って主人公と魔界の複数勢力がぶつかり合う――というものだ。
そして、そのシナリオで主人公と戦う最大の強敵が『剣魔ドレイク』だった。
ちなみに、そのシナリオ内では『暗黒騎士ベルダ』も登場する。
こっちは序盤に主人公と少しやり合った後、何かのアクシデントで敗走したはずだ。
「『絶望の神殿』には強力な結界が三重に敷かれていて、内部に入るためには三つの魔道具が必要だ。まずそいつを取ってこないとな」
「『絶望の神殿』、ですか」
と、コーデリア。
「いや、これは俺の個人的な用事だから、俺一人でやるよ」
「何を仰いますか」
彼女が首を横に振った。
「あたしはベルダ様に救われました。そのご恩を果たさせてください」
「いや、でも――」
ドレイク戦は決して楽ではない。
ゲーム内でも指折りの強敵である。
俺はともかくとして、コーデリアの力では危険が大きい。
もちろん、彼女もトップクラスの強さはあるけど、今回は相手が悪すぎるんだ。
「気持ちだけもらっておくよ。やっぱり俺一人で――」
「お兄様」
アルマがやって来た。
「悪い、今大事な話を――」
「なぜ女心がお分かりにならないのですかっっっっっ」
「………………へっ?」
「コーデリアさんはお兄様と一緒に過ごしたいんです。お兄様を手伝うのも、そのための口実! ならばお兄様はただコーデリアさんの気持ちを正面から受け止めればいいのですっ」
「い、いや、なんか勘違いがあるような……」
「ありません!」
アルマが言い切った。
……どう見ても、コーデリアが俺にデレるような展開とは思えないんだが。
「昨日コーデリアさんと一緒に過ごして、この方なら大事なお兄様をお任せできると確信しました」
「あの、アルマ……?」
「アルマのお勧めですよ」
「勧められても……」
「なぜです!? 美人だし、気立てがよいですし、アルマとも話があいますし、お兄様と結婚してコーデリアさんがお義姉様になってくださったら、アルマ嬉しいです!」
「それなら普通にお前とコーデリアが友だちになればいいだけでは……?」