「剣魔ドレイク……!?」
SSRキャラの一人だった。
魔界で史上最強と謳われた伝説の英雄。
そして、剣術においては俺をもしのぐ最強格のキャラクターだ。
「そのドレイクが何の用だ」
「君が持つ宝物をいただく」
ドレイクが剣を抜いた。
「力ずくで、な」
「随分と好戦的だな」
俺も剣を抜いた。
宝物っていうのがなんのことかは分からないが、問いただしている状況ではなさそうだった。
気を抜けば、俺もさっきの衛兵たちみたいに斬り殺される。
奴の斬撃はとんでもない速度だ。
ゲーム内での『剣魔ドレイク』の性能を思い出す。
名前の通り、剣術に特化したキャラである。
その斬撃の鋭さや1ターンにおける攻撃回数は群を抜いている。
こいつ、強い――。
肌をぴりぴりと刺すような殺気を感じた。
そもそもSSRキャラなんだから強いのは当たり前だが。
それだけじゃなく『実感』としてわかる。
俺がこの『暗黒騎士ベルダ』の体に慣れてきたのかもしれないな。
こうして向き合っているだけで相手の強さを感じとれるというのは――。
「参る!」
短く告げてドレイクが突進した。
「【縮地】」
その速度が異常なまでにアップする。
いや、少し違う。
特殊な歩法で一気に間合いを詰める特殊スキルである。
ならば、
「【脚力強化】」
俺は純粋な脚力をアップさせ、スピードで圧倒する作戦に出る。
俺とドレイクは超速で動き回った。
音速すらも超え、しばらくの間は、間合いを詰めては離し、また詰めては離れ……という繰り返し。
そんな間合いの攻防の末、ついに俺たちは剣を合わせる。
「【斬撃×20】!」
同時にスキル名を叫んだ。
同時に、二十の斬撃を打ち込み合った。
威力はまったくの互角――。
俺たちは弾かれたように離れる。
「ほう、さすがは魔界に名高い『暗黒騎士ベルダ』。ここまでとは……」
「いや、お前もかなりのものだ」
俺は気を張り詰めたまま言った。
沈黙が流れる。
俺たちの間で緊張感がどこまでも高まっていき――、
「……出直すぞ、暗黒騎士」
ドレイクがつぶやいた。
「この城の宝物はいったん後回しだ。いずれ『絶望の神殿』にて相まみえよう。そこで待つ――」
言って、去っていく剣魔。
「ん、『絶望の神殿』?」
俺はハッとなった。
もしかしてこれって――。
「主人公が体験するシナリオじゃなかったっけ……?」