「帰りにもう一泊、お城に滞在してはいかがでしょう」

 コーデリアが進言した。

「わずかなとはいえ、人間界と魔界の次元間通路を進むには、それなりに魔力を消耗します。先に回復させてからのほうがよいかと」
「魔力を消耗? そうなのか?」

 俺は別に何も感じなかったけど――。

「ベルダ様は魔力量からして別格ですから。次元間通路を進んだくらいではビクともしないでしょう。ですが、他の者は違います」

 と、コーデリア。

「それに――妹君が寂しがりますよ」
「あ……そうかもな」

 じゃあ、もう一泊していくか。

 なんだか旅行みたいなノリだけど、俺はそう決めた。

 それに――『解呪の宝珠』を使ってしまった以上、他に魔王の呪いを解く手段を考えなきゃいけない。
 今後の身の振り方なんかも頭の中で整理したいからな。

 そういう意味でも、帰還前に一泊っていうのはよさそうだ。

「よく進言してくれた、コーデリア。ありがとう」
「あ、あたしは副官ですから……この程度のことでお礼など不要です」

 コーデリアはどうやら照れているようだった。

 なんだか、ちょっとだけ態度が軟化したか?



「お兄様、お帰りなさいませ!」

 アルマが満面の笑みで出迎えてくれた。

「それからコーデリアさんも!」
「ただいま戻りました」
「お兄様をお守りいただき、ありがとうございます」
「いえ、むしろ……あたしの方がベルダ様に救われました。情けない話ですが……」
「お兄様はお強いですもの。あ、もちろんコーデリアさんも強いですけど……」
「ベルダ様は別格ですからね」
「はい! 私の自慢のお兄様です!」

 アルマはニコニコ笑顔だ。

「コーデリアさんとも滅多に会えないし、今日は一緒に寝てくださいね?」
「あたしでよろしければ」
「やったー! 今夜はパジャマパーティです~!」

 アルマは本当に嬉しそうだ。

 うん、一泊することにしてよかった。