「そうだ、『解呪の宝珠』を使えばいいじゃないか」
「い、いけません……」
コーデリアがうめいた。
「『解呪の宝珠』は使いきりの貴重なアイテム……それを使う対象は魔王様やベルダ様のような高位の方に限られます……あたしなどに……」
「見捨てられるわけないだろ」
俺は首を左右に振った。
使い切りのアイテム、か。
つまり『解呪の宝珠』をコーデリアに使えば、俺にかけられた『魔王の呪い』は依然として残ることになる。
他に解呪する方法があるのかどうかも分からない。
けれど――、
「迷う理由なんてないよな」
俺はコーデリアに微笑んだ。
「奴の宝物庫から『解呪の宝珠』を探してくる。みんな、俺と一緒に来てくれ!」
と、部下たちに告げる。
「コーデリアはここで待機。治癒や護衛担当に何人か残ってくれ」
指示を出した。
「ベルダ様、そんな……あたしなんかのために」
「お前は大事な副官だろ。失うわけにはいかない」
俺はコーデリアに言った。
実際、彼女は有能な副官のはず。
失うのは痛いし、何よりも――。
わずかな時間とはいえ、新しく生まれ変わったこの世界で一番身近で過ごしてきた戦友なんだ。
『失うわけにはいかない』以前に『失いたくなかった』。
「だから――必ず助けるよ、コーデリア。待っててくれ」
言うなり、俺は部下たちの大半と一緒に城の宝物庫に向かった。
そして、半日ほどが経ち――。
「元気になってよかったよ、コーデリア」
彼女の顔は血色がよく元気そうだった。
完全に回復したように見える。
「……なぜ、あたしを助けたのですか」
コーデリアが俺をにらんだ。
「貴重な宝珠を使って悪かったよ」
「……もともと、あれはベルダ様が使う予定だったのでしょう?」
「えっ」
「アルドーザ討伐を申し出たのも、それが理由……違いますか?」
コーデリアの表情はますます険しい。
俺は答えなかった。
「あなたが魔王様に対してどう思っているのか、これからどうなさるのか――あたしは何も問いません。ただ、この恩には必ず報います」
コーデリアがそこでようやく表情を緩めると、一転して微笑んだ。
「やはり、あなたは……以前のベルダ様とは何かが違う――そう感じます」