全長五メートルくらいの宝石、といった外観のコアは、俺の一撃で真っ二つになった。

「うおおおおおおおおおおおっ、死ぬのか、私がぁぁぁぁ……っ」

 アルドーザが絶叫する。
 無敵の耐久力を持っているように見えた彼も、さすがにコアを割られては生きていられないんだろう。

「だ、だが、ただでは死なん――」

 ん?

 ボウッ……!

 二つに割れたコアがそれぞれ黒い輝きを放った。

「なんだ――?」

『エルシド』のゲームでこんな現象は見たことがない。

「ベルダ様!」

 と、誰かが突進してきて、俺を突き飛ばした。
 次の瞬間、コアから黒い光が放たれる。

「うあああああっ……」

 悲鳴を上げたのは――コーデリアだった。
 先ほど俺を突き飛ばしたのも彼女だ。
 きっと、この光から俺をかばったんだろう。

「コーデリア!」

 叫ぶ俺。

「うううう……」

 コーデリアの周囲に黒いモヤがまとわりついている。

「はははははは、【呪い】を振りまく我が最後の呪術! まずその副官から餌食になりましたね!」

 アルドーザの哄笑が響いた。

「一人では死にませんよ! さあ、次は誰にしましょうか……あなたたちも全員死ね――」
「お前ひとりで死ね……!」

 俺は怒りの声を上げ、奴のコアに肉薄した。

【超級斬撃】一閃。
 俺の繰り出した剣がコアを両断する。

 今度こそアルドーザは完全に消滅した。

「コーデリア、大丈夫か!」

 俺は彼女のところに駆け寄った。
 美しい少女騎士が地面に倒れていた。

「申し訳……ございません、ベルダ様……」
「お前、俺をかばって――」
「副官としての仕事を……したまでです、こほっ……」

 コーデリアが血を吐いた。

「あなたが無事でよかった……さすがに覇王アルドーザの呪いですから……あたしは、もう……助からないかと……」
「も、もういい! それ以上しゃべるな!」

 俺は叫んだ。

「治癒魔術が使える者は彼女を治してくれ! 早く!」

 部下たちに呼びかける。
 すぐに何人もの魔族が飛んできて、コーデリアに治癒魔法をかけた。
 だが――。

「駄目です、とても解呪できません……」

 彼らは沈痛な表情で首を振る。
 アルドーザの呪いは簡単に解けるような代物じゃないんだろう。

「ごほっ、げほっ……」

 その間にもコーデリアは血を吐き続けている。
 美しい顔が青ざめ、どんどん生気が抜け落ちていく。

 まずい、このままじゃすぐに死ぬ――。

 俺は絶望した。

 俺の代わりに、この子が死ぬ……。
 駄目だ、そんなの……!

「待てよ――」

 俺はハッと気づいた。

 一つだけコーデリアを救う手立てがあったぞ。