俺の斬撃がアルドーザを一撃で真っ二つにした。

 ――ここに来るまでに、俺はベルダの手持ちスキルを一通り確認していた。

 一晩の間、城で英気を養っている間に、だ。

 そして『エルシド』のゲーム内でも猛威を振るった攻撃スキル【超級斬撃】を、この世界のベルダとして転生した俺も会得していることを確認した。

【超級斬撃】。

 名前の通り剣術スキル【斬る】の超強化版――。

 いや、『超強化』という言葉すら生ぬるい。

 クリティカル発生率99%、物理&魔法防御の貫通効果に加え、範囲攻撃効果や回避無効効果も併せ持つ究極の斬撃である。

 さすがのアルドーザもこの一撃には耐えられなかったらしい。
 周囲は俺の斬撃の威力でごっそり削り取られていた。

 山も、大地も、すべて――斬撃の範囲内のものは『消滅』している。

「がは……はぁぁ……っ」

 真っ二つになったアルドーザが苦しげな息をつく。

 顔も二つに割れてるんだけど、どっちの顔でしゃべってるんだろう?
 ――なんて、のんきなことを考えていると、

「お、おのれ、このままでは済まさんぞ……!」

 アルドーザが叫ぶ。
 相変わらず、どっちの顔でしゃべっているのか、あるいは両方の顔で同時にしゃべっているのかも判別しづらいが。

「悪いな。俺は生き延びるために必要なことをさせてもらう」

 俺は剣を構え直した。

 相手が人であれ、モンスターであれ、魔族であれ――。
『殺す』ことに変わりはない。

 できるだけ人死には避けたいけど、不殺を貫き続けるのは現実的に無理だろう。

 ――割り切るしかない。

 俺は内心で自分に言い聞かせた。

 だから……許してくれとは言わない。
 だけど、ここでアルドーザを見逃すつもりはない。

 俺自身の未来を守るために。
 これは、生きるための戦いなんだ。

 人を殺すよりは、魔族を殺したほうがまだマシ……という理由は醜いだろうか?

 俺には分からない。

 ただ、俺も生きるために必死だ。

「だから、遠慮はしない――【光剣】」

 呪文とともに俺の剣に赤い輝きが宿った。

「終わりだ、アルドーザ」
「ひ、ひいっ、助け――」
「駄目だ、死ね」

 俺は無情に剣を振り下ろした。

 コアが、真っ二つになった。

 今度こそアルドーザ撃破だ。