「つぶれるがいい――【圧殺】!」
「【防壁】!」

 アルドーザが繰り出した拳を、俺はシールドを張って受け止めた。

 ごうっ!

 互いの攻撃と防御スキルがぶつかり合うと、周囲にすさまじい衝撃波が吹き荒れた。

 アルドーザの戦闘スタイルは単純だ。
 拳や蹴りをスキルを使って威力を増幅して放つ。

 ただ、それだけ。

 ただし、厄介なのは奴の体のサイズが二十メートルを超えていることだろう。
 チマチマした小技より、その巨体を生かした渾身の一撃一撃こそが必殺となる――それが『覇王アルドーザ』の必勝戦法だった。

 ばきんっ。

 現に今の一撃を受けた俺の【防壁】――緑色に輝くエネルギーシールドは、大きな亀裂が走っていた。

「あと二、三発で壊れるな、これ」
「我が攻撃を防ぎ続けることなどできません。いかに魔界最強の『暗黒騎士ベルダ』といえどもね」

 アルドーザが笑う。

 さて、どうするか――。
 やはりゲーム通りに攻略するのがセオリーだよな。
 と、

「ベルダ様、加勢いたします!」

 と、地上から跳び上がるシルエットがあった。

 数は、二つ。
 コーデリアとラシルドだ。

「駄目だ、来るな!」

 俺は思わず叫んでいた。
 二人の強さは知っているが、さすがにアルドーザ相手では厳しいだろう。

「【氷嵐の刃】!」
「【三段突き】!」

 コーデリアがブリザードと氷の刃を同時に打ち出し、ラシルドが高速の突きを繰り出す。

「無駄だ」

 奴の巨体にはさしたる効果がないようだ。

「【圧殺】」

 反撃を受け、ラシルドがまず吹っ飛ばされた。

「ぐっ、強い――」
「まだよ!」

 が、攻撃を回りこんで避けていたコーデリアがさらに氷の攻撃スキルを放つ。

「無駄だと言っている」

 しかし、何度攻撃してもアルドーザの体が大きすぎてダメージらしいダメージをまるで与えられない。

「【圧殺】」
「【防壁】!」

 奴の攻撃を、俺はシールドを張って防いだ。

 ばきんっ。

 すでに弱っていたシールドが壊れ始める。

「ははは、このまま押し切ってあげますよ――」
「【強化】」

 俺はシールドを強化した。

「何……っ!? このレベルの魔法を重ね掛けだと――!」
「俺は魔王軍最強の『暗黒騎士ベルダ』。剣でも魔法でも、俺に立ち向かえると思ったか?」

 冷ややかに告げて、俺は剣を振り上げた。

 最初から――俺がやるべきことは一つだけ。
 自分の力をそのままぶつける。

 そうすれば、魔王軍のどんな奴でも敵じゃない。
 ゲーム内でのデータがそうなっているのだから。

「終わりだ、アルドーザ――【超級斬撃】!」

 振り下ろした剣が、奴の巨体を真っ二つにした。