「では『次元門』を起動します」
コーデリアが言った。
「【次元門・魔導機構起動】」
と、呪文を唱える。
ご……ごごごごごご……っ!
同時に、巨大な門が振動を始めた。
おおむね、『エルシド』のゲームグラフィックと似たような感じだ。
周囲の大気が震え、歪む。
虹色の輝きが周囲に満ちる。
そして次の瞬間、光が弾けた。
「ここは――」
いつの間にか違う場所に移動していたらしい。
いや、『違う世界』に――というべきか。
俺はあらためて周囲を見回した。
暗い空。
どこまでも広がる荒野。
「魔界……か?」
ゲーム内でも何度か訪れたことがある、まさしく死の大地――。
「じゃあ、さっそくアルドーザの元へ行くか」
さっさと討伐任務を済ませてしまいたい。
そして、本来の目的である『解呪の宝珠』を奴から奪うのだ。
俺にとっては死活問題だからな。
「一つよろしいですか、ベルダ様」
コーデリアが進言した。
「『覇王アルドーザ』討伐の前に、一晩英気を養ってはどうでしょう」
「英気を養う……か」
俺は平気だけど、部下たちを見ると、緊張でこわばっているように見える。
敵の『覇王アルドーザ』ってかなり強力な魔族だったはずだし、精神的に張り詰めているのかもしれないな。
よし、ここは急がば回れだ。
部下たちの英気を養うことを優先しよう。
アルドーザが俺一人で倒せる相手ならいいけど、部下たちの力も借りなきゃいけない局面が出てくるかもしれないからな。
「ここからすぐ近くにベルダ様の居城があります」
「じゃあ、そこで一泊するか」
「いいと思います」
「案内してくれ、コーデリア」
俺は彼女に言った。
「あ、いや、もちろん俺は場所を知ってるけど、こういう『案内』っていうのが苦手でさ」
苦しい言い訳だろうか。
もちろん、俺は城の正確な場所なんて知らない。
ゲームで何度か見たことがあるけど、俯瞰して見下ろすマップと実際の地形じゃ勝手が違いすぎる。
「お任せください。このような些事、ベルダ様のお手を煩わせるまでもありませんので」
「じゃあ、俺がやりますよ、案内」
と、立候補したのはラシルドだ。
「ベルダ様のお役に立ちたいです」
「ああ、助かるよ。頼む」
「了解ですっ」
俺の言葉に、ラシルドは顔を輝かせた。
本当に嬉しそうだ。
慕われてるなぁ……。
正直、俺もけっこう嬉しい。
――というわけで、ラシルドが先導し、俺たちは『暗黒騎士ベルダ』の居城――その名も『暗黒騎城』にやって来た。
「『暗黒騎士団』もそうだけど、城の方もそのまんまなネーミングだな……」
「分かりやすくていいと思います!」
ラシルドが言った。
「めちゃくちゃ格好いい名前だと思いますよ!」
「そ、そう……?」
ともあれ、俺たち一行は城の中に入った。