俺たち『暗黒騎士団』はアルドーザの領地に向けて出発した。

 奴はこの世界ではなく魔族たちの世界――『魔界』にいる。
 そのため、まずここから魔界に入らなければならない。

「『次元門』ってところを通って、魔界に入る。で、その『次元門』はここから東方五十キロくらいの地点に設置してある……でいいんだよな?」
「はい。人間どもが現在、攻め入っているようですが『次元門』を守るのは、魔王軍の精鋭たちなので落とされることは考えにくいです」

 答えるコーデリア。

「……ですが、この程度の情報はあたしから申し上げなくても、とっくにご存じでは?」
「あ、ああ、その、確認だよ確認。なにごとも確認が大事だろ?」
「はあ……」

 コーデリアは怪訝そうだ。

「それに騎士団の中にそういう基本的なことを忘れている者がいないとも限らないじゃないか。そういう者に伝えるために、あえて基本的なことをこうやって話しているわけだ」
「なるほど、部下を思いやってのことでしたか」

 お、納得してくれたか。

「……部下を思いやるなど、明らかに以前のベルダ様と違うように感じます」

 コーデリアがぽつりとつぶやいた。

 しまった、余計に怪しまれた!

 うーん……なにせ『暗黒騎士ベルダ』だからなぁ。
 ゲーム本編じゃ悪逆非道なキャラクターとして描かれていた。

 だからといって、俺にそんな行動をするのは無理だ。

「あたしは……今のベルダ様の方が接しやすいです」

 コーデリアが小さくつぶやいた。

「えっ」

 よく見たら、彼女の頬がかすかに赤い。
 お、好感度が上がってるのか……?

「このままデレてくれると嬉しいな……」
「いえ、デレませんよ?」

 コーデリアがいきなり素の顔に戻って、俺をにらんだ。
 やっぱツンか……。



 俺たちは一日ほどの行程で目的地にやって来た。

「あれが『次元門』か――」

 前方にそびえる巨大な黒い門。

「……なんか想像していたより大きいな」

 ゲームで見たことがあるけど、そこではせいぜい高さ数メートルくらいの建造物に見えた。
 けど実際の『次元門』はたぶん三十メートルを超えていると思う。

「ゲームのグラフィックと現実とは違う、ってことか……?」

 おおおおお……おおぉぉ……っ!

 そのとき、風に乗って鬨の声が聞こえてきた。

「なんだ……?」

 明らかに戦闘が行われているような、声。

 そういえば人間たちが攻め入ってるってコーデリアが説明してたけど――。
 なんだか、きな臭い予感がするぞ。