「どこだ、ここは?」
気が付くと、俺は城の中にいた。
そう、中世ヨーロッパとかにありそうな城である。
さっきまで会社の中でエンドレス残業をしていたはずなんだが……。
「そうだ、エナジードリンクを飲んで、なんか意識が遠くなって……」
過労で寝てしまったんだろうか?
「じゃあ、これは夢の中ってことか?」
あらためて周囲を見回した。
やっぱり城の中だ。
というか――、
「なんだよ、この格好……」
俺自身の格好も変だった。
さっきまで会社で残業してたからスーツ姿のはずなのに――全然違う。
真っ黒な鎧と兜。
それが全身を覆っている。
まるでゲームに出てくる黒騎士みたいな――。
そこで、壁の一部が鏡のような素材になっていることに気づいた。
自分の姿を映してみる。
「やっぱり黒騎士だ……しかも、このデザインって」
俺が普段やっているソシャゲに出てくる『暗黒騎士ベルダ』にそっくりなんだけど……。
「お目覚めになられましたか、ベルダ様」
と、誰かが近づいてきた。
銀色の髪をポニーテールにした少女騎士だ。
凍りつくような美貌はタレントやアイドルなんて目じゃないほどの、信じられないレベルの美少女だった。
彼女の姿も知っている。
同じソシャゲに出てくる暗黒騎士の副官『氷雪騎士コーデリア』である。
「ベルダ……?」
……って俺に対して言ってるんだよな?
俺の格好といい、コーデリアそっくりの彼女といい……まさか、ここって。
「『エルシオンレッドファンタジー』の世界……?」
『エルシオンレッドファンタジー』。
通称エルシド。
平和な魔法王国を襲う魔王軍との戦いを描いたRPGのソシャゲである。
俺も仕事の合間によくやっていた。
まあ、最近は残業が増えまくって、あんまりプレイできてなかったんだけど――。
ここは、その世界なんだろうか?
最近プレイできてないせいで夢に出てきたのかもしれないな。
「夢……だよな……これ……?」
だんだん自信がなくなってくる。
どう考えても、この感覚はリアルだ。
あまりにも――リアルなんだ。
現実と言われても疑いようがないくらいに。
「どうなされました、ベルダ様」
コーデリアがたずねた。
「い、いや、その、ここってどこだっけ?」
「はい?」
しまった、ストレートに聞きすぎた。
向こうからしたら、意味不明の質問だよな。
「ここは魔王城内七階第三区画です、ベルダ様」
コーデリアが律儀に答える。
「魔王城内……」
と、
「ベルダ、コーデリア、そろっているな?」
ヴ……ンッ。
うなるような音を立てて、前方の景色が歪んだ。
いや、違う。
歪んでいるのは空間そのもの。
そして、その向こうから長身の女性が現れる。
二十代半ばくらいの、絶世の美女。
「これは――ゼルファリス陛下!」
コーデリアが深々と頭を下げる。
ゼルファリス――。
俺はその名に息を飲んだ。
そう、エルシドにおけるラスボス。
つまり、魔王である。
体が自然と震えだした。
彼女が放つすさまじい威圧感のせいだけじゃない。
俺の体そのものが、彼女への畏怖を記憶している……そんな感じだった。
「さっそくだがベルダよ、お前にやってもらいたい仕事がある」
魔王が告げる。
「仕事……?」
「とある村を滅ぼせ。村人を皆殺しにしろ」
随分と――悪役らしい任務だ。
って、今の俺は悪役か。
気が付くと、俺は城の中にいた。
そう、中世ヨーロッパとかにありそうな城である。
さっきまで会社の中でエンドレス残業をしていたはずなんだが……。
「そうだ、エナジードリンクを飲んで、なんか意識が遠くなって……」
過労で寝てしまったんだろうか?
「じゃあ、これは夢の中ってことか?」
あらためて周囲を見回した。
やっぱり城の中だ。
というか――、
「なんだよ、この格好……」
俺自身の格好も変だった。
さっきまで会社で残業してたからスーツ姿のはずなのに――全然違う。
真っ黒な鎧と兜。
それが全身を覆っている。
まるでゲームに出てくる黒騎士みたいな――。
そこで、壁の一部が鏡のような素材になっていることに気づいた。
自分の姿を映してみる。
「やっぱり黒騎士だ……しかも、このデザインって」
俺が普段やっているソシャゲに出てくる『暗黒騎士ベルダ』にそっくりなんだけど……。
「お目覚めになられましたか、ベルダ様」
と、誰かが近づいてきた。
銀色の髪をポニーテールにした少女騎士だ。
凍りつくような美貌はタレントやアイドルなんて目じゃないほどの、信じられないレベルの美少女だった。
彼女の姿も知っている。
同じソシャゲに出てくる暗黒騎士の副官『氷雪騎士コーデリア』である。
「ベルダ……?」
……って俺に対して言ってるんだよな?
俺の格好といい、コーデリアそっくりの彼女といい……まさか、ここって。
「『エルシオンレッドファンタジー』の世界……?」
『エルシオンレッドファンタジー』。
通称エルシド。
平和な魔法王国を襲う魔王軍との戦いを描いたRPGのソシャゲである。
俺も仕事の合間によくやっていた。
まあ、最近は残業が増えまくって、あんまりプレイできてなかったんだけど――。
ここは、その世界なんだろうか?
最近プレイできてないせいで夢に出てきたのかもしれないな。
「夢……だよな……これ……?」
だんだん自信がなくなってくる。
どう考えても、この感覚はリアルだ。
あまりにも――リアルなんだ。
現実と言われても疑いようがないくらいに。
「どうなされました、ベルダ様」
コーデリアがたずねた。
「い、いや、その、ここってどこだっけ?」
「はい?」
しまった、ストレートに聞きすぎた。
向こうからしたら、意味不明の質問だよな。
「ここは魔王城内七階第三区画です、ベルダ様」
コーデリアが律儀に答える。
「魔王城内……」
と、
「ベルダ、コーデリア、そろっているな?」
ヴ……ンッ。
うなるような音を立てて、前方の景色が歪んだ。
いや、違う。
歪んでいるのは空間そのもの。
そして、その向こうから長身の女性が現れる。
二十代半ばくらいの、絶世の美女。
「これは――ゼルファリス陛下!」
コーデリアが深々と頭を下げる。
ゼルファリス――。
俺はその名に息を飲んだ。
そう、エルシドにおけるラスボス。
つまり、魔王である。
体が自然と震えだした。
彼女が放つすさまじい威圧感のせいだけじゃない。
俺の体そのものが、彼女への畏怖を記憶している……そんな感じだった。
「さっそくだがベルダよ、お前にやってもらいたい仕事がある」
魔王が告げる。
「仕事……?」
「とある村を滅ぼせ。村人を皆殺しにしろ」
随分と――悪役らしい任務だ。
って、今の俺は悪役か。