とある神社、巫女服を着た少女が縁側に座っている。
外ではザーザーと雨が降っている。
「今日は雨か…」

そう呟く少女の名は、日影霊。ここ、日影神社の巫女…だが

「することないし寝るか…」

街で言われている彼女の二つ名。それは…
“引きこもりの巫女”だ。
彼女の家族はもうすでに亡くなっていて神社は霊が管理しているはずなのだが、
何かのきっかけで引きこもりになってしまった。
もう何年も前からだ。

きっかけの一つは《能力者》だからというのだろう。
この世界には《能力者》という人達が存在する。
のだがみんなが持っている物ではなく、ごく一部の
人のみ“生まれつき”で所持しているものだ。
そして、この世界の《能力者》は…
悪いもの、世界を脅かす悪者、とされている…。
でも、そう思われるのもしょうがない。
なぜなら能力を悪用している人がいるからだ…。

嫌がらせや人からの視線、そういうのに耐えられないのだ。
もちろん良くしてくれる人はいるのだが、今の霊は
“全ての人を拒絶している”のだ。

「人なんて、嘘の塊だ。悪者なんて死んじまえ」
碧の蝶が飛ぶ。
「キミはまた過去から、巫女の仕事から逃げてるのかい?」

私はハッと声の主の方を向く。
そこにいたのは傘を差さず手に本を持った“小さな少女”だった。
「私の、何を知っている?」
「んー今は教えてあげられないな。それにしてもヒドい精神力だね。腐っても巫女じゃないのかい?キミは」
何を言ってるんだこの人は内心呆れていた。
だが、この人の言ってることが何故か刺さる。
「まぁそんなキミに良いことを教えてあげる!

キミは近いミライ大切な人と出会うよ。それも2人もね。

その人ために君は動くんだ」
本当に何を言ってるんだろうか...。
でも不思議だ。嘘には聞こえなかった。
「じゃあボクは行くね。キミはどのミライ(物語)を選択するのかな?」
碧の蝶が飛ぶ。

「私の...ミライ(物語)?」
大切な人...一度は失った、もの。
正直、もう怖かった。大切な人がまた失ってしまうのではないか...?と。
でもあの“小さな少女”の話はなんだか説得力があった。
「ねぇ...お姉ちゃんまた私、人と関わってもいいのかな?
お姉ちゃんを_した私が、またもう一度...」

私はもう亡き姉にそう問う。