高校時代に
たまたま通学電車で
会ったきりのシュウジロだ。
そんな風に思っていたら、
突然
空いている
わたしの隣のユカ席に
シュウジロウは
ドカリと座ってきた。
「橘って、
竹花と仲良かったんだ?」
突然
わたしを挟む男子同士に
なったシュンが、
シュウジロウに話しかけると、
シュウジロウが
タブレットを
わたしの奥に戻して答える。
「高校受験の塾からかな。
一緒だった仲だよ。竹花も
久しぶり。あれ以来だよな。
相変わらず元気そうだな。」
塾でなら、いざしらず。
わたしとナガレが、
電車に並んで乗る姿を見れば、
自ずと
付き合っているだろうと
予想出来るはずなのに
あの時、
シュウジロウは何も
わたし達に
聞いては来なかった。
シュウジロウが言う
『あれ以来』というのは、
あの時の事だと思う。
徐に思い返している
わたしを余所に、
シュンとシュウジロウは
わたしを挟みながらの会話。
「橘、えらく洒落てる。でも
ネクタイ、疲れないか?」
「同窓会だっていうからさ。
けっこうカジュアルだな皆んな」
そう言いながら、
シュウジロウは
わたしの目の前で、
ネクタイに片手を掛けて
無造作に喉元を
寛げると、
「居酒屋飲みなら、無礼講か。」
わたしに向かって
肩肘を机に預けた。
「橘くんって、相変わらずね。」
シュンと
軽口を叩き合うような返事と、
わたしには
久しぶりの挨拶を続ける
シュウジロウ。
シュウジロウとは、
塾で話をするようになった
けれど、
もともとは小学校どころか
幼稚園からの同級生になる。
どこか子供の頃から
キザな雰囲気を出していた
から、
わたしとはタイプが違うと
気後れしていたのもある。
ユカに言わせれば、
カッコつけ過ぎてキョドっている
らしいけれど。
「あーーー!あたしの席なくな
い?!誰が座ってるのー!」
3人で横並びして
話始めた時、
色紙を振り回して、
ユカとマアヤが戻ってきた。
「橘じゃん!あんた
街組だったよね?あれから、
どうしてたんだよー!」
ユカはシュウジロウの首に、
後ろから羽交い締めみたいに
腕を掛けた。
幼稚園から一緒なのは、
ユカも同じなのだ。
「ぐ!、都会の荒波にもまれて
都落ちしてきたんだよ!苦し!」
「なにそれ?てことは、戻り?」
ユカはシュウジロウに締めていた
腕をほどいて、
手でシュウジロウを追いやる。
自分の席を開けさせたのだ。
「半年前から役所勤務してる。」
仕方なくシュウジロウは
周りこんで、
シュンの向かいの席に移動した。
わたしの向かいに座る、
マアヤの隣だ。
「あー。なるほどね。じゃ、
ここは一発、歌、歌っときな」
だからか隣に移ってきた
シュウジロウに
丁度戻りで
回ってきたマイクを、
マアヤが否応なしに
シュウジロウに押し付けた。
「マジか?!いきなり?!」
「丁度、マイク回ってきたわけ。
助かったわー、橘様々よ。」
マアヤから
無理やり渡されるマイクに、
シュウジロウは
あたふたとしている。
「へぇ、橘くんが歌うの
見るとか、初めてだよね。」
わたしは珍しいシュウジロウの
焦り顔を見ながら、
奥に直された
タブレットをもう一度出して、
曲を入れるスタンバイ。
タブレットからは
メニューだけでなく、
ネットカラオケのオーダーも
出来るのだと、
話している間に
シュンから教えてもらったのだ。
「これって、もうスナックの
ノリだよねぇ。観念したら?」
「何する?ノリイイのいく?」
意地悪い顔を態とらしくする
シュンが、
シュウジロウに
わたしの手の中にある
タブレットを示す。
マアヤがマイクの後から
回されてきた、
ヘッドレスタンバリンやらも
机に広げてきた。
「ハイ!サユとマアヤっちは!
鈴!鳥嶋は、マラカスだね!」
「マラカス、、わかった。」
項垂れるシュンを余所に
ユカは、
鳴らすとタンバリンが
光る仕組みを気に入ったのか、
「よし!!橘!歌うのだ!それ」
叫びながら
シュウジロウに
『たーちばな!たーちばな!』と
エールを送り始めた。
気が付いたら、
騒いでいるのが注目を集めて
しまったのか
部屋の全員からコールが起きる。
「な!なら、竹花!曲入れて!」
満更でない顔を浮かべた、
シュウジロウが選曲したのは
わたし達学年には馴染みの曲。
体育祭の応援曲だ。
紅白に別れて応援合戦をする
体育祭は、
前半紅組と後半白組のクラスに
別れて点数を競い合う。
だから同学年の半分になる
後半の白組は、
この曲で応援の演舞を
踊れてしまう。
わたしが
シュウジロウに指定された曲を
入れて、
前奏が流れた途端に、
『『『おー、あの歌かよ?!』』
『『懐かしい!!』』
あちらこちらから、
感嘆の声が上がって、
あっという間に
シュウジロウの歌声の元、
揃っての演舞を始めて、
もうお祭り騒ぎだ!!
わたし達は
踊りを引っ張るボーカル=
シュウジロウの賑やかしに、
各々
ハンドベルやマラカスを
存分に鳴らして
大いに拍子を取った。
今日が店まるまる貸し切りで
良かったと思える程、
部屋の中は
振り付けを踊る同級生と、
それ写真にしたり、
拍子を取る組とで
揺れに揺れる。
もちろん、
シュウジロウの歌が終わると、
お返しとばかりに
前半紅組の応援歌が流れて、
また演舞大会になった。
「あー、懐かしい!最初は
スナックカラオケかって話して
たのになぁ。な、竹花さん。」
隣のシュンの言葉に
わたしは頷きながら、
自分が初めて
『スナックデビュー』した日を
思い出した。
たまたま通学電車で
会ったきりのシュウジロだ。
そんな風に思っていたら、
突然
空いている
わたしの隣のユカ席に
シュウジロウは
ドカリと座ってきた。
「橘って、
竹花と仲良かったんだ?」
突然
わたしを挟む男子同士に
なったシュンが、
シュウジロウに話しかけると、
シュウジロウが
タブレットを
わたしの奥に戻して答える。
「高校受験の塾からかな。
一緒だった仲だよ。竹花も
久しぶり。あれ以来だよな。
相変わらず元気そうだな。」
塾でなら、いざしらず。
わたしとナガレが、
電車に並んで乗る姿を見れば、
自ずと
付き合っているだろうと
予想出来るはずなのに
あの時、
シュウジロウは何も
わたし達に
聞いては来なかった。
シュウジロウが言う
『あれ以来』というのは、
あの時の事だと思う。
徐に思い返している
わたしを余所に、
シュンとシュウジロウは
わたしを挟みながらの会話。
「橘、えらく洒落てる。でも
ネクタイ、疲れないか?」
「同窓会だっていうからさ。
けっこうカジュアルだな皆んな」
そう言いながら、
シュウジロウは
わたしの目の前で、
ネクタイに片手を掛けて
無造作に喉元を
寛げると、
「居酒屋飲みなら、無礼講か。」
わたしに向かって
肩肘を机に預けた。
「橘くんって、相変わらずね。」
シュンと
軽口を叩き合うような返事と、
わたしには
久しぶりの挨拶を続ける
シュウジロウ。
シュウジロウとは、
塾で話をするようになった
けれど、
もともとは小学校どころか
幼稚園からの同級生になる。
どこか子供の頃から
キザな雰囲気を出していた
から、
わたしとはタイプが違うと
気後れしていたのもある。
ユカに言わせれば、
カッコつけ過ぎてキョドっている
らしいけれど。
「あーーー!あたしの席なくな
い?!誰が座ってるのー!」
3人で横並びして
話始めた時、
色紙を振り回して、
ユカとマアヤが戻ってきた。
「橘じゃん!あんた
街組だったよね?あれから、
どうしてたんだよー!」
ユカはシュウジロウの首に、
後ろから羽交い締めみたいに
腕を掛けた。
幼稚園から一緒なのは、
ユカも同じなのだ。
「ぐ!、都会の荒波にもまれて
都落ちしてきたんだよ!苦し!」
「なにそれ?てことは、戻り?」
ユカはシュウジロウに締めていた
腕をほどいて、
手でシュウジロウを追いやる。
自分の席を開けさせたのだ。
「半年前から役所勤務してる。」
仕方なくシュウジロウは
周りこんで、
シュンの向かいの席に移動した。
わたしの向かいに座る、
マアヤの隣だ。
「あー。なるほどね。じゃ、
ここは一発、歌、歌っときな」
だからか隣に移ってきた
シュウジロウに
丁度戻りで
回ってきたマイクを、
マアヤが否応なしに
シュウジロウに押し付けた。
「マジか?!いきなり?!」
「丁度、マイク回ってきたわけ。
助かったわー、橘様々よ。」
マアヤから
無理やり渡されるマイクに、
シュウジロウは
あたふたとしている。
「へぇ、橘くんが歌うの
見るとか、初めてだよね。」
わたしは珍しいシュウジロウの
焦り顔を見ながら、
奥に直された
タブレットをもう一度出して、
曲を入れるスタンバイ。
タブレットからは
メニューだけでなく、
ネットカラオケのオーダーも
出来るのだと、
話している間に
シュンから教えてもらったのだ。
「これって、もうスナックの
ノリだよねぇ。観念したら?」
「何する?ノリイイのいく?」
意地悪い顔を態とらしくする
シュンが、
シュウジロウに
わたしの手の中にある
タブレットを示す。
マアヤがマイクの後から
回されてきた、
ヘッドレスタンバリンやらも
机に広げてきた。
「ハイ!サユとマアヤっちは!
鈴!鳥嶋は、マラカスだね!」
「マラカス、、わかった。」
項垂れるシュンを余所に
ユカは、
鳴らすとタンバリンが
光る仕組みを気に入ったのか、
「よし!!橘!歌うのだ!それ」
叫びながら
シュウジロウに
『たーちばな!たーちばな!』と
エールを送り始めた。
気が付いたら、
騒いでいるのが注目を集めて
しまったのか
部屋の全員からコールが起きる。
「な!なら、竹花!曲入れて!」
満更でない顔を浮かべた、
シュウジロウが選曲したのは
わたし達学年には馴染みの曲。
体育祭の応援曲だ。
紅白に別れて応援合戦をする
体育祭は、
前半紅組と後半白組のクラスに
別れて点数を競い合う。
だから同学年の半分になる
後半の白組は、
この曲で応援の演舞を
踊れてしまう。
わたしが
シュウジロウに指定された曲を
入れて、
前奏が流れた途端に、
『『『おー、あの歌かよ?!』』
『『懐かしい!!』』
あちらこちらから、
感嘆の声が上がって、
あっという間に
シュウジロウの歌声の元、
揃っての演舞を始めて、
もうお祭り騒ぎだ!!
わたし達は
踊りを引っ張るボーカル=
シュウジロウの賑やかしに、
各々
ハンドベルやマラカスを
存分に鳴らして
大いに拍子を取った。
今日が店まるまる貸し切りで
良かったと思える程、
部屋の中は
振り付けを踊る同級生と、
それ写真にしたり、
拍子を取る組とで
揺れに揺れる。
もちろん、
シュウジロウの歌が終わると、
お返しとばかりに
前半紅組の応援歌が流れて、
また演舞大会になった。
「あー、懐かしい!最初は
スナックカラオケかって話して
たのになぁ。な、竹花さん。」
隣のシュンの言葉に
わたしは頷きながら、
自分が初めて
『スナックデビュー』した日を
思い出した。