最初はあれだよな、先生。
覚えてねーかもだけれど、
おれ達だけ、読書感想文?
やらせただろ?

サユなんかは、わざわざ授業前に
添削とかしててさ。
気になるだろ?

そういやさ。
あれ、贔屓?

ふーん、そっかそっか。
サユの推薦対策ね。そんな試験
あったんだな。
じゃあ、おれ達関係なくない?
普通に私学受験だったし。
おれと、シュウジロウも
やらされたよな?感想文。

よく考えたら、
先生とこって、普通の公立受験
第1希望の生徒って、
取らなかったよな?
おれも、シュウジロウも私学受験
だったし。
あのレオも私学推薦だろ?

あれって、何で?

それなのにさ、
サユが公立第1希望受験だって
先生が言ったから驚いたって。
どれだけ特別かよ?って。

あ、ごめん。ごめん。
話脱線したわ。

で、レオ?
あいつが、自分もやるって
いいだしたの?
感想文?マジかー。
全然授業遊んでたよな?
サユにちょっかい出して。
あいつ、
やっぱり隅に置けない
野郎だったなあ。

だいたいさ、
毎回サユん隣座るとか
あり得ないって。
何っかっちゃあ、
サユにテキスト見せてもらって、
消しゴム借りてたしさ。
たまに、肘とか当たらせてた。
あれ、
ちょっとムカついてたんだよ。
セクハラオヤジかって?!

先生も、注意しないと。
可愛い子の隣に野郎は
座らせない配慮ってやつ。

普通、男で座るだろ?
4人居てて、男3人だし。
席、他に沢山あったしな。

ずっと後ろから見てて
思ってたんだよな、
みえみえで、
わざとらしいヤツだなあって。

あげくに、サユの教科書と
課題の本を間違って持って帰る
とか、やりすぎ。

サユは全然だし。

あれさ、先生は、解ってたよな?

レオ、わざと課題の本を
置いていって、
サユの教科書持って帰るとかの。

え?気付いてない?
ウソだろ!
普段天才って言ってさ全然だな。
そんなだからだよ。
うるさいって?ハハ!!
ウソウソ。
先生は、最高の先生だよ。
照れる?へー。

そう!それで、
あの時が最初だった。

レオが先生の課題本を
置いてって、
サユの教科書持って帰る事件!

サユは学校で使う教科書で
困ってて、
次の学年の授業始まるって、
先生も困ってさ。
じゃなきゃ、車でレオん所に
交換しに行くんだがーっとか
ボヤイて。

おれら、授業8時終わりだろ?
3年の授業待ってたら
10時になるって、
サユがレオん家の住所を
先生に聞いたんだよな?

今じゃ、絶対アウトだよ、あれ。
個人情報!え?
レオの家にも電話したって?
で、レオまだ帰ってなくて、
携帯でねーし?

先生、あれ絶対わざとだって。
レオ、あーゆーのだけ、
頭回る。今もだよ。

あー、祭りの関係で、
海側と会議する時さ、
会うんだよ。レオ。
変わってねーよ。
あれ?レオ、先生とこ
全然来てねーの?
あいつ、、

先生に散々迷惑かけたからだよ。

あいつの家さ、漁師でも世話役
やってるから、
祭でも仕切りしてるんだよ。
あっこも祖父いさんより、
前からかな?祭の顔役ね。

先生とこで顔知って、
レオんとこ、
そう、あの日行っただろ?

それでレオんとこが、
仕切りしてるって分かった。

だいたいさ、
まだ夜8時っても女の子1人、
サユだって知らない海側とか
行かせられるわけないって。
絶対、声かけられるに決まってる。

ほら、おれ妹いるし。
そーゆーとこ、
しっかりしてたから。
ジェントル、ジェントルね。
ほんと!それだけだよ!

案の定、海側って街頭少ないから
自転車でも、なんか暗くって。
サユ、一生懸命
おれとシュウジロウの自転車、
付いてきてたよ。

あー、ちょっと遅めにすれば
良かったなー。
サユちっさいから。
色白いし、夜見るとほんと、、


でさ、先生。
こっからが笑える。
レオのヤツ、呼び鈴聞いて
飛んで出て来たんだよ。

あ、あいつの家、ザ、漁師!
しかも世話役って感じ!
和風で玄関、タタキが
こう広いんだよ。
まあ、うちも土間あるから、
似た感じだけれど、
あいつんとこはデカかった。
一枚もんの杉?ん机でさ。

あれ?聞いてない?

レオさ、サユだけ
教科書持って来ると思ってたん
だろな。
おれと、シュウジロウが
後ろに居てて、
キョドってたもん。

玄関の様子見に来た、
レオのお袋さんが
「入っていきなさい!」って、
おれ達をデカい仏壇ある
和室に通しくれて。

「全然勉強できない子だけど、
仲良くしてあげてねぇ。」って

えらい刺身の舟盛りをさ、
自前でやったとかのを出して
くれたんだよ。

舟盛り!初めてだった。
だってさ、海側ん神輿頭んとこで
祭で出るって聞いてても、
酒飲めるようにならないと
打ち上げ参加できないし。

シュウジロウのやつ、舟盛り。
目ー開いて驚いてたよ。
サユも
「こんなにたくさん、お刺身
見たことないです。」って。

親父さんは、朝早いからって、
あの時は会ってないな。

何故かサユがお誕生日席で、
あ、
あん時も隣、わざわざレオ、
座ってたな。考えたら。

たらふくご馳走なって、
レオんお袋さんが自転車は
置いていって、
車で送るからって、サユに
話すの聞いたから、
おれが、
「責任持って家まで送ります。」
って言ったんだよ。

あれが、最初。

レオの顔とか、なかった!

それからだよ。
塾、終わったら
おれとシュウジロウで、
サユん家の前まで
送って行くことにしたんだよ。

シュウジロウは、
サユんとこよりも山っ側で
まだ上がるだろ?

え、おれは反対方向だ?
いーんだよ、先生。

サユ、塾で全然しゃべらなかった
だろ?
先生の質問に答えるだけで。
あんだけレオに話かけられても、
ちょっと笑うぐらいで。

だからさ、
それからサユの事、
シュウジロウと送って行く様に
なってから、
サユが、ちょっとずつ話て
くれるようになって。

だから、全然反対方向でも、
静かーな夜にサユ、
送ってくの、アリだったんだよ。