私と俊君は鬼頭家の本家に来ていた。
 今私が住んでいる鬼頭家の別邸も二人暮らしには広すぎる家なのに本家はその何倍もの広さがある。
 本家には使用人がたくさんいるのかメイド服を着た人がたくさんいる。
「あれ、お兄ちゃん。その人、彼女さん?」
 階段の上からは長い髪をポニーテールにした女の子が立っていた。
 身長が百五十センチくらいだから小学生か中学生だろうか。
「うん」
「ふ~ん?」
 その女の子はニヤッと口角を上げた。
「ラブラブなの?彼女さんとお兄ちゃん」
 聞きなれない言葉が飛び交っていた。
「そりゃそうだろ……てか、挨拶しろ」
 その女の子は階段から降りてきて私の前に立った。
 その子は人形のように綺麗な顔立ちだった。
鬼頭(きとう)愛梨珠(ありす)。小学五年生。お兄ちゃんのことよろー」
 こんなに軽い小学生初めて見た。
 今時の子は皆こんな感じなのだろうか。
「こら、愛梨珠。ちゃんと挨拶しろよ」
「んー?ノリって結構大事じゃねー?」
「ごめんね、芽唯、この子は俺の妹だ。仲良くしてやってね」
「う、うん!私、齋藤芽唯って言います!よろしくね」
「ん、よろしく」
 鬼頭君家のリビングで私、鬼頭君、愛梨珠ちゃんの三人でお茶会をした。
「芽唯さんさー、あとであーしの部屋来てくんない?」
「え、いいの?」
「よき」
 お茶会が終わった後、私は愛梨珠ちゃんの部屋に行った。
「お、おじゃましま~す」
「ん、どぞー」
 部屋は愛梨珠ちゃんにピッタリな淡いピンク色の部屋だった。
「ねぇ、芽唯さんって友達つくるときって、どんなふうに……なんて話しかけてきた?」
 そんなこと意識したことない。
「うーん……よろしくね、としか言わないかな?どうして?」
 私の言葉に愛梨珠ちゃんは目を見開いた。
「あーしね……友達って呼べる人がいなさすぎんの。あーしはあやかしが通う学校に行ってんだけど、皆、あーしが成績良いとかって言って近寄ってこない。成績良いとか褒め言葉に聞こえるけど、あーしは悪口にしか聞こえない」
「……愛梨珠ちゃんは、どうしてそれが悪口に聞こえるの?」
「確かに成績良いとかって表面は褒め言葉じゃん?でも、そのせいで他の子と話せないとか裏面は悪口じゃん?良い意味なのは表面だけ、あーしは他の子とも仲良くしたいって思ってる。でも、どうすればいいのかわかんないの」
「愛梨珠ちゃんから話しかけたことある?」
 私が言うと愛梨珠ちゃんは苦笑いした。
「……話しかけたことはあるけど、何年も前の事。今は話しかけても、皆、無視してくる。だから、独りだってこと知られたくなくて、ノリとか大事にするようになった」
「あ、愛梨珠ちゃんは、それでいいの?」
 愛梨珠ちゃんは私が言った言葉に相当驚いていた。
「……え?それでいいって?」
「今の愛梨珠ちゃんも大好きなんだけど、さっきの話だと、本来の愛梨珠ちゃんはどっか行っちゃったみたいな感じだったから……」
 私の言葉に愛梨珠ちゃんは目をぱちくりさせた。
「心配してくれてありがとう。でもね、あーしは、今の自分、けっこー気に入ってんの」
「ふふっ、なら、今の愛梨珠ちゃんの感じで明るく他の子に話しかけたら皆、愛梨珠ちゃんのトリコだよ」
「…うん。ありがとっ。お兄ちゃんのことよろしくね!」
「私もよろしくね」
 愛梨珠ちゃんと仲良くなれて良かった。