七海とお母さんと別れてから、少し経った頃。
 学校に行くと、明らかに私は避けられていた。
 悪口はよくあったけど、こんなにあからさまに避けられたこと初めてだな。
 机のある方へ行くとクラスの子たちはクスクスと嘲笑っていた。
「………」
 これには何も言えないな。
 机にはマジックペンで『調子乗んな』や、『ブス』などと書かれていた。
 ほら、ここでも。
 私はどこへ行っても嫌われる。
「あーあ、これじゃあ、使い物にならないねぇ?」
 馬鹿にしたような声で言ったのは七海だった。
「……消せば、どうにかなる──」
「は?何言ってんの?消さなくてもいいんじゃなぁい?だって机に書いてあることは事実じゃない?」
 この発言には頭に来てしまった。
 私は無言で雑巾を取り、濡らしに行った。
「なんで、雑巾?てか、なんで一緒に登校しないの?」
 安心する声。
「鬼頭君……おはよう」
「行こう」
 そう言われ教室に行く。
 私は濡れた雑巾で机を拭く。
 消えてる。良かった。
「……手伝う」
 そう言って鬼頭君も一緒に消すのを手伝ってくれた。
「ありがとう」
「ブスとか何が言いたいんだろ、こんなに可愛いのに」
 その発言に顔が赤くなった。
 可愛いとかサラッと言えるの、すごいな。
「あ、ありがとう」
 私の机は鬼頭君に手伝ってもらったおかげで綺麗になった。
「大丈夫、今日、家に帰ったら会議ね」
 もしかしたら追い出されてしまうかもしれない。
 そんなことを考えたら顔が真っ青になった。
 会議の内容を勝手に想像して家に帰った。
「ただいま」
「あ、帰って来た……って、どうしたの?」
 私が暗い顔をしていたのか、鬼頭君は私の顔を覗いた。
「あ、いや。会議って……?」
「ちょっとこっち来て」
 こうして連れてこられたの鬼頭君のお部屋。
 青系の色で統一してある。
「会議の内容は──」
 ゴクリ。
「芽唯が俺の事を『鬼頭君』って呼んでくる事と、一緒に登下校してくれないこと」
 目をぱちくりさせる。
「へ……⁉」
「鬼頭君とか……名前で呼んでよ」
「え、えっと……俊君?」
 緊張しすぎて疑問符になってしまった。
「ん、それでいい。あと、一緒に登下校ね」
「え、えぇ?」
「嫌?」
「嫌じゃなくて……な、七海に──」
 七海に嫌がらせをされる……そう言おうとして言葉を吞み込んだ。
「姉の方はもう気にしなくていいよ」
 本当に気にしなくていいのかな。
「う、うん。そう、だね」
 今は気にしてしまうけれど、いつか気にしなくていい日が来るのかな。
「じゃあ、これからは登下校一緒ね……あ、そうだ。明日って空いてる?」
「うん。空いてるよ?」
「なら、本家に行こう」
「本家⁉……ご両親がいるの?」
 ご両親に会うとか無理!
「ううん、両親は仕事でいない、だけど……」
 鬼頭君はそう言いかけて止まった。
「……?なに?気になる」
「明日会えばわかる」
 明日、緊張するな。