side/七海

 あたしはあいつが大嫌いだ。
 あいつとは今はあたしの双子の妹の芽唯。
 芽唯は容姿はずば抜けて可愛いわけではないが、女子の中では美人な方に入る。
 それで明るかったらまだ許せるけど、芽唯はおどおどしていて見ていてムカつく。
 高校に入学して、名簿を見れば芽唯と同じクラス。
 いいチャンスだ。
 教室に入れば当たり前だけど、あたしが注目され芽唯は全然目立たない。
 逆に悪目立ち。
 気に入らないのは芽唯の隣が鬼頭君だということ。
「ねぇ、齋藤さん。妹の方、教科書見せて?」
 芽唯は鬼頭君に動揺していた。
 芽唯はそのまま動揺して、あたしが教科書見せれば評判も良くなる。
「え、えぇ?」
「あ、ごめんね!芽唯がすぐに答えられなくて……良かったらあたしが見せるよ?」
 これで鬼頭君もあたしの虜。
「……アンタより、妹の方が良いから」
 冷たい声、冷たい視線。
 芽唯にはお仕置きが必要だ。
 楽しく後のことを考えていた。
 ある日の夜、芽唯はいつも通りお皿洗い、あたしはテレビを見ていた。
 この番組もつまんない。
 リモコンを操作していると、何かが割れる大きな音が聞こえた。
 芽唯の方を見ると芽唯は震えていた。
 心の中で芽唯を煽っていると、お母さんも入って来て芽唯のことを怒っていた。
 お母さんはうるさいし、芽唯はずっと謝るだけ。
 いつもあたしは得をし、芽唯のことをいじめる。
 学校では逆のことを言って芽唯を孤立させている。
 学校は楽しくない。
 あたしのことを皆好いているけど、寄ってくるのは同じ人間。
 あたしはあやかしと話したいのに。
 なのに、あの日から変わった。
 芽唯が家に帰ってくると、鬼頭君まで一緒にいた
 芽唯は部屋に駆け上がった。
「なんで鬼頭君がいるのぉ?」
 少しイラつきながらもその気持ちを押し殺して聞いた。
「お前らが何をしたかは知っている。芽唯は俺と暮らすことにした」
「……ちょ、ちょっとお待ちください、どういう事ですか?」
 お母さんは恐る恐る鬼頭君に聞いた。
「そのままの意味だ。芽唯に危害を加えるなら一緒にはいさせられない」
「……芽唯でいいんですか?」
 あたしは率直に言った。
 あんな子ただの見た目だけだ。
 何も取柄がない、話しかけてもつまらない反応ばかりする。
「芽唯以外ありえない」
 さすがはあやかしって言いたいところ。
 あやかしは独占欲が強いらしい。
 だから、あたしは選ばれたかった。
 あやかしと両想いになったり、お付き合いすることはすごく嬉しいことだと思う。
 あやかしは社会的地位も高く、相手は鬼。
 あたしが何かをして、勝てる相手じゃない。
「ということで、芽唯には近寄るな」
 そう言い残し、芽唯と鬼頭君は出て行った。
 あたしには悔しさとほんの少しの羨ましさだけが残った。