放課後。
「……齋藤さん。さっきはごめん」
 鬼頭君はバツが悪そうな顔をしていた。
「う、ううんっ!大丈夫だよ」
 私はスゥ……ッと、大きく空気を吸って言った。
「あ、あの!鬼頭君、今、時間ある?」
「うん、なにか大事な話?」
「……うん」
 鬼頭君には言っておきたい。
 その後、自分がどうなってもいいから。
 私たちは近くの公園に来た。
「それで、話って?」
「あ、あの、ね。信じてもらえなくてもいい……鬼頭君は私と七海の関係ってわかる?」
「二人の関係?双子ってこと?」
 やっぱり、言うのやめたほうがいいかな?
「……えっと、私と七海は義理の関係っていうか、本当は血が繋がってないの」
「え?」
 さすがに鬼頭君でもさっき見た記憶じゃあ、血が繋がっていないことわからないか。
「でね、さっき、鬼頭君が見た記憶、どんな光景が映った?」
 鬼頭君は一瞬、言いにくそうな顔をしていた。
「齋藤さんが平手打ちされていたとこ……」
 あの時の光景が映ったのか……なら、話が早いかな。
「そう……なんとなく察してるかもだけど、私と七海は仲が悪くてね。七海は私のお父さんが今のお母さんと再婚して、お母さんが連れてきた子供が七海ってわけ」
 鬼頭君は納得したような顔をしていた。
「だから、二人とも仲が悪いのか……確かに姉の方が嫌がらせをしているっていう噂を聞いたことはあるが、やっぱり嘘だったようだな」
「え、ウソ?」
「俺は鬼だからな。人間の嘘くらいは見抜ける」
「そっか。まあ、そんなとこで私は七海とお母さんとはうまくやっていけていないの」
 鬼頭君はしばらく何かを考えていた。
「嫌じゃなかったら、俺と一緒に住む?」
「えっ……?」
 住むってどこにだろうか。
 それに誰となのか。
「嫌だった?」
 鬼頭君はシュンとした顔をしていた。
「あ、え、いや、……住むってどこに?」
「俺の家に」
「え、それじゃあ、ご家族は?」
「母親と父親は本家にいる、それに、俺は別邸に住んでいる。いわゆる一人暮らし」
 ということは私と鬼頭君の二人暮らしということ。
 私の顔はリンゴ以上に真っ赤だ。
 ここで断ったら鬼頭君との関係も終わるし、家でも七海とお母さんと暮らすだけの日々になってしまう。
「あ、あの、迷惑じゃなかったら、一緒にいてもいい?」
「うん。てか、プロポーズ?それ」
 意味がわからずコテンと首を傾げる。
「はぁ……こんなんでやってけるかな」
 鬼頭君はボソッと呟いた。