学校へ行くと、見知らぬ少女が俊君と話していた。
「ねぇ、俊くん!今度遊ばない?」
「無理」
 少女の誘いを即座に拒否する俊君。
「あ、芽唯」
 私に気がついた俊君。
 少女は私のことを睨みつけている。
 あまりよく思われていなさそう。
「……あなた、斎藤芽唯ちゃん?」
「はい。そうですよ……?」
「そうなのね。私は宮野(みやの)メアリって言います。この間この学校に転校したの」
 メアリさんの髪の毛の色は誰もが羨むであろう綺麗な茶色。
 瞳はサファイアのような青色。
 とても綺麗。
「よろしくお願いします。……俊君のお友達ですか?」
「そうよ。幼馴染みなの」
「……芽唯ちゃんって、双子のお姉さまがいるんでしょ?なのに虐げられて……なんて不幸なのかしらね」
 なぜ七海のことを知っているのだろう。
「えっと……姉はいます。いじめられてたのは事実です。でも、不幸なんかではありません……!」
「お姉さまやお母さまに虐められていたのは本当なんでしょ?虐められて幸福な方なんてきっといないわ。嘘は吐かなくていいのよ?」
 ニッコリと笑うメアリさんは氷のように冷たい言葉を吐く。
「……メアリ。何を言ってんの」
「俊くんだって思うでしょう。不幸でしかないって」
 メアリさんの言葉に顔を険しくする俊君。
「昔は辛い生活だったかもしれないが俺は芽唯が幸せに暮らしていると思う」
 俊君の言葉に心が温まる。
 家に帰るとメアリさんの言葉が頭から離れなかった。
「芽唯、どうかした?」
「なんか、メアリさんの言葉が気になっちゃって……」
「メアリのことは気にしなくていいよ。アイツは昔からあんな感じだから」
 そういえば幼馴染みって言っていたような。
「幼馴染みなんだっけ」
 そう聞くと、俊君は渋い顔をした。
「アイツがそう言っただけ。父さんが経営している会社の取引先の娘で昔からよく会っていたってだけ。まあ、単なる腐れ縁ってわけ」
「そうなんだ」
 それから数日後、愛梨珠ちゃんと会うことになった。
 今回は俊君はいない。
「へぇー。メアちゃんに会ったんだ。毒舌でしょ?」
「うん。まあ、そうだね。毒舌だね」
 愛梨珠ちゃんの質問に苦笑いするしかなかった。
「あーしもあの毒舌には思うところもあるけどね。でも、本当は優しく子だよ?メアちゃんはお兄ちゃんのこと大好きだったっけな」
 私はまだ優しい子なのかわからないな。
「というか、メアリさんって人間?」
 俊君や愛梨珠ちゃんみたく明らかに整った顔立ちの人ならあやかしだとわかるが、わからない場合もある。
 メアリさんは顔立ちが整いすぎてあやかしだと思っている。
「ん?人間だよ。あの髪色と目の色だとわかんないよね。メアちゃんって初対面の人には警戒心強めなんだよね」
 その後、楽しくおしゃべりをして帰ったのだった。