side/俊
 芽唯との記念で水族館に来た。
 芽唯はとってもはしゃいでいて、とても愛おしくて。
「芽唯、他に行きたいとこある?」
 芽唯は少し考え込んでいた。
「あ、なら、少し、ついて来てくれる?」
 芽唯の願いならなんだって叶えてやる。
 そう思った自分に驚いた。
 俺は恋愛には興味なんて一切なかった。
 芽唯と出逢うまでは。
 芽唯と出逢ったのはクラスが同じになり、席が隣になってからだ。
 出逢いとしては、決して特別なものではない。
 芽唯は双子の姉と席が前後だった。
 俺の知り合いの双子はとても仲がいいからなのか斎藤姉妹は仲がとても悪そうな雰囲気だった。
 妹の方は姉の方を見るととても怯えていた。
 だけど美人で、教科書を見せてもらった時も優しくて……そんな彼女のことを守りたくなった。
 彼女の記憶を見た瞬間にドス黒い感情が沸き上がる。
 俺は芽唯の家に行き、姉と母親に冷たい言葉を浴びせた。
 自分でも驚いた。
 そして、今、連れてこられたのはお墓だった。
「芽唯、ここは?」
「お父さんのお墓、ごめんね、こんなところで……お父さんに会わせたいなって……」
  ああ、もう。この子はいい子過ぎる……。
 芽唯は目を瞑り、手を合わせた。
 俺も同様に目を閉じ、手を合わせた。
(芽唯さんとは仲良くさせてもらっています。今は一緒に住んでいます。……ちゃんとしたことは十八歳になったら芽唯さんに言います)
 芽唯の父親に誓った。