「ふう……」

手元に溜まっていた桜の花びらを、息を吹きかけて空へと帰す。
己の掌には、失ってしまった寂しさが残った。

「……桜は、嫌い。早く…早く散ってくれないかしら」

桜は嫌い。あの人のことを思い出すから。
桜は嫌い。『綺麗だ』と言ってくれたことが忘れられないから。
桜は嫌い。まだ好きだと思ってしまうから。

桜は……

君の最期の言葉だから。