彼の言いたいことを察した私は、自分が既婚者であることを言おうとした。

「ははっ……けど、まだ雪風は処女だろ? 知ってるよ。俺たちあやかしの結婚は、肉体関係の成立も含まれる。だから、まだ……間に合うんだ。雪風」

「待って……何で知ってるの?」

 私はその辺りで、背筋にゾッとするものが通り抜けた。あんなに親しかったはずの虎太が怖い。肉体関係のあるなしなんて、こうして目に見えてわかるはずないのに……なのに。

「海神だなんだと持ち上げられているあいつも、全く真逆の属性にある山の中にあれば、自分の能力は半分以下だ。そして、猫又の俺はこういう山の中では絶好調。そして、人の夢を操るのって……俺は凄く得意だから」

「嘘! もしかして、虎太が……虎太が全部?」

 不穏な流れを感じた私は慌てて虎太から身体を離そうとしたけど、ぎゅうっと肩に回された腕に力を入れられて逃げられない。