私がクスっと笑ってそう言えば、紫電さまは情けなさそうな顔で頷いた。

「あの猫又に……まんまと、してやられてしまったようだ。婚礼の頃から、君も満足してくれているものだと……浮かれていた僕の不覚だ。本当にすまない」

 私はゆっくりと、紫電さまの元へと進んだ。背の高い紫電さまは、見上げないと顔が見えない。けど、それも少し長めの前髪が邪魔をしていた。

 私は彼の綺麗な紫色の目を見たくて、前髪を手で払った。泣きそうな顔。完璧な彼のこんな落ち込んでいるところを見て、私がガッカリしたかと言われたら真逆だった。

 可愛くて……もっと彼のことが好きになった。

「紫電さま……私、紫電さまに嫌われているかもしれないと思って……理由を自分から聞いたら良かったのに。今まで黙ってて……すみません」

「いや、僕も悪かった。いくら……腕の良い術師に騙されていたとは言え……」