今朝も、いちばんに教室についたのは私だった。
カーテンを開ける作業も、もはや日課になりつつある。
窓からは九月の朝日がサラサラと差し込んでいる。
窓側にある自分の席に座りぼんやりと教室を眺める。
今は静かなこの場所も、やがてたくさんの声に包まれるのだろう。
誰よりも早く登校するのには理由がある。
最初から教室にいれば自分から『おはよう』を言わなくてもいいから。あとは、家にいたくないからというのもある。
でもなによりも大きな理由は、『パラドックスな恋』という小説を読むためだ。
『パラドックスな恋』は小説投稿サイトに掲載されている作品で、書籍化はされていない。
初めて読んだ日のことは今でも覚えている。
影絵のような毎日に、この小説はひと筋の光を当ててくれた。
主人公の名前が私と同じ『悠花』というのも、大きな要因のひとつかもしれない。
小説のなかにいる悠花は、キラキラしていて素直でかわいくて家族仲もよくて
――まるで私とは正反対。だからこそ、憧れてしまうのかもしれない。
スマホを開き、タイトルを表示させるだけで胸が熱くなる。
こんなことが実際に起きたらいいな……。
大好きな小説と同じような起きたなら、私は迷わず主人公と同じ行動を取るだろう。
さあ、今朝も読もう。
このたいくつでつらくて悲しい日々を忘れるために。
指先で『パラドックスな恋』のページをめくれば、周りの音は遠ざかっていく。
文字たちは誘う、物語の世界へ――。
カーテンを開ける作業も、もはや日課になりつつある。
窓からは九月の朝日がサラサラと差し込んでいる。
窓側にある自分の席に座りぼんやりと教室を眺める。
今は静かなこの場所も、やがてたくさんの声に包まれるのだろう。
誰よりも早く登校するのには理由がある。
最初から教室にいれば自分から『おはよう』を言わなくてもいいから。あとは、家にいたくないからというのもある。
でもなによりも大きな理由は、『パラドックスな恋』という小説を読むためだ。
『パラドックスな恋』は小説投稿サイトに掲載されている作品で、書籍化はされていない。
初めて読んだ日のことは今でも覚えている。
影絵のような毎日に、この小説はひと筋の光を当ててくれた。
主人公の名前が私と同じ『悠花』というのも、大きな要因のひとつかもしれない。
小説のなかにいる悠花は、キラキラしていて素直でかわいくて家族仲もよくて
――まるで私とは正反対。だからこそ、憧れてしまうのかもしれない。
スマホを開き、タイトルを表示させるだけで胸が熱くなる。
こんなことが実際に起きたらいいな……。
大好きな小説と同じような起きたなら、私は迷わず主人公と同じ行動を取るだろう。
さあ、今朝も読もう。
このたいくつでつらくて悲しい日々を忘れるために。
指先で『パラドックスな恋』のページをめくれば、周りの音は遠ざかっていく。
文字たちは誘う、物語の世界へ――。