その時、まるで身体が揺さぶられるように視界が左右に動いた。
目の前の風景が歪んだ直後、ガッと肩を掴まれたのを感じた。
ギョッとした私は、悲鳴を上げるべく口を開けて――
◆◆◆
「稲畠さん!」
名を呼ばれて、私はハッと目を開けた。
どうやら少し眠ってしまっていたらしい。座席で座っていただけであるはずなのに、私の呼吸はまるでどこかを駆け続けていたように荒くなってしまっている。
向かいの席には、そんな私を心配そうに覗き込んでいる女性の姿があった。
「どうしたんですか? もしかして怖い夢でも見たんですか?」
「いや、別になんでもないんだ……。少し乗り物酔いをしてしまったみたいだ」
「あっ、だから飲んでおきますかって提案したのに」
手が震えそうになるのを堪えて、額の汗を拭いながらそう言い訳した。可愛らしい少女のような目鼻立ち整った顔をした彼女が、ショートパンツから覗く白い太腿にショルダーバックを引き寄せるのを見て、私は白髪がまばらにある髪を後ろに撫でつけた。
目の前の風景が歪んだ直後、ガッと肩を掴まれたのを感じた。
ギョッとした私は、悲鳴を上げるべく口を開けて――
◆◆◆
「稲畠さん!」
名を呼ばれて、私はハッと目を開けた。
どうやら少し眠ってしまっていたらしい。座席で座っていただけであるはずなのに、私の呼吸はまるでどこかを駆け続けていたように荒くなってしまっている。
向かいの席には、そんな私を心配そうに覗き込んでいる女性の姿があった。
「どうしたんですか? もしかして怖い夢でも見たんですか?」
「いや、別になんでもないんだ……。少し乗り物酔いをしてしまったみたいだ」
「あっ、だから飲んでおきますかって提案したのに」
手が震えそうになるのを堪えて、額の汗を拭いながらそう言い訳した。可愛らしい少女のような目鼻立ち整った顔をした彼女が、ショートパンツから覗く白い太腿にショルダーバックを引き寄せるのを見て、私は白髪がまばらにある髪を後ろに撫でつけた。