妄想はやけに鮮明で、終わらないままでいる。

 足早に進む廊下は、黴臭い湿気に満ちていて喉にこびりつくようで生々しい。けれど古風な窓と廊下は新品同様で、それでいて廃墟の如く生活感がないという奇妙なズレが発生していた。

 私が終わらないと思っているから、廊下はいつまでも続いてしまうのだろうか?

 だって妄想の中のはずなのだ。それなのにどうして終わらない。
 ここはなんだ。一体、どこなんだ?

 そう思った時、唐突に廊下以外の屋内風景が目に留まって私は驚いた。
 壁が続いているはずだった右手に、難しい本がギッシリと詰まった部屋が見えたのだ。扉もない入口が、ポッカリと口を開けていて――私は、ひどく怖くなった。


 ここには、よくないナニかが住んでいる。


 そんな独白が脳裏を過ぎった私は、自分で想像しておきながらより怖くなった。その部屋には、急に人がいなくなってしまったかのような生活感が、ひっそりと残されているような気がしたからだ。