建物の中は薄暗い。ギシギシと音を立てる木目調の廊下が、規則的な距離をもってつきあたりで右手に折れ、そこからまた同じ長さで真っ直ぐ続いて、そしてまた右へと曲がる。


 出口は――、『玄関』はまだか。


 そこを歩いている私は、だんだんと焦りを感じ始める。

 何十歩進もうが、同じ景色ばかりが続いているような錯覚に恐怖心が煽られた。ここには終わりがないのではないかと、刻々と進むごとにそんな焦燥に駆られるのだ。

 窓、廊下、薄暗いせいで色の識別が難しい質素な壁。

 踏みしめるたび廊下から上がる軋みが、静寂の中に響いてやけに耳についた。

 いつまで経っても玄関が見えてこない。

 曲がっても、曲がってもまだ廊下が続く。もう間がった回数さえあやふやになった私は、さすがにおかしいぞと気付き始める。

 私は想像を誤ったのか?

 この【家】は四角形だ。だから時計回りに一周すれば、元の玄関に戻るはずなのだ。

 不意に、私は足元から心臓を貫かれるような恐怖に呑まれた。