帰り道で話したあの靴の花飾りは、アパートの玄関前に転がっていたのだ。それを発見した時、私達二人は顔を見合わせて笑ってしまったものだ。あの【家】に落としてしまったなんてことはただの妄想だったと分かって、私も密かに胸を撫で下ろしていた。
「今ここに※※※※君がいたら、きっと『靴の飾り一つで大騒ぎするなんて、相変わらず君は注意が足りないところがいけない』と言うだろうね」
「うん、本当にごめんね、※※※君。はじめから花飾りは玄関で落としてしまっていたのね」
そう彼女が口にした時、私は、不意に「あ」と気付いて言葉を失った。
今日、公園にいた彼女の両方の靴には、大きな花飾りが付いていたのを思い出した。それを何気なく目に留めていた時の光景が、唐突に脳裏に蘇って、ひどい悪寒が私の背を走り抜けた。つまり彼女がそれを落としたのは、自分の家の玄関先ではないのだ、と。
――こんこん
その時、途切れた会話の静寂を破るようにノック音が響き渡った。
前触れもなくその音が耳に飛び込んできて、私と彼女は驚いて身体を強張らせた。
「今ここに※※※※君がいたら、きっと『靴の飾り一つで大騒ぎするなんて、相変わらず君は注意が足りないところがいけない』と言うだろうね」
「うん、本当にごめんね、※※※君。はじめから花飾りは玄関で落としてしまっていたのね」
そう彼女が口にした時、私は、不意に「あ」と気付いて言葉を失った。
今日、公園にいた彼女の両方の靴には、大きな花飾りが付いていたのを思い出した。それを何気なく目に留めていた時の光景が、唐突に脳裏に蘇って、ひどい悪寒が私の背を走り抜けた。つまり彼女がそれを落としたのは、自分の家の玄関先ではないのだ、と。
――こんこん
その時、途切れた会話の静寂を破るようにノック音が響き渡った。
前触れもなくその音が耳に飛び込んできて、私と彼女は驚いて身体を強張らせた。