足を動かしていると、次第に私達の心は落ち着きだした。

 少し前に感じた恐怖は、やはり錯覚であったのだと結論付けられた。だって私達は、同じ条件のもと【家】を思い浮かべたのだ。それぞれが瞼の裏で見たという家の特徴が合致する可能性は高いし、その妄想と想像の中で他の何かを見る方がおかしいだろう。

 妄想したその家の中を、時計回りに進んだだけのことなのだ。紙や十円玉を用意してコックリさんをしたわけでもなく、道具を見て立てて凝った呪いの儀式をしたわけでもない。

 これはただの想像遊びだ。我々は、何も、怖いことなんてしていない。


「ばいばい、また明日ね」


 一人、二人、離れて行く。

 しかし、彼女が不意に、別れ際に私のシャツをつんと引き寄せて――

          ◆◆◆

 長い廊下が続いている。

 廊下の左側には、正方形の窓が延々と同じ間隔で続いていた。じめじめと生い茂った暗い森があるばかりで、いくつの窓を通り過ぎたのかも分からなくなる。