耳元で、何者かの低い囁きがぼそぼそと私の名を呼ぶのが聞こえた。シャツの裾を遠慮がちに、つん、と引かれて振り返った私の視界は真っ黒に染まった。

          ◆◆◆

 霊感テストをした日、私達は怯えた男の子を皆で家まで送り届けた。

 その帰り道、最後に【彼】が「またね」と去って行くのを、心細そうに見送った【彼女】が、私のシャツをそっとつまんで引き留めた。

「私ね、『玄関』をノックし忘れたの。開けた後に気付いて、慌ててやり直したけど、ずっと心臓がドキドキして、お母さんに叱られる前みたいにとても怖かったわ」

 ただの想像ゲームだ。私は、不安でいっぱいだという顔をした彼女にこう言った。

「大丈夫だよ、ただの頭の中の想像の家だ。誰も君を叱ったりしないさ」
「うん……でも、※※※※君たちには秘密にして欲しいんだけど、実は……」
 
 そう口にした彼女が、内緒話をするように手招きしてきた。

 私は続く話を聞くため、彼女の方へと耳を傾けた。近づいてきた彼女の唇から、こぼれた吐息が耳にかかって少しくすぐったかった。