「必ず玄関をノックして入り、最後はその玄関から外に出る。そうしないと、恐ろしいことが起こる……――うーん、怪談話と分かっていても、なんだか怖いですねぇ」

 ミサナは、タクシーの後部座席に腰かけてからスマートフォンを操作し続けていた。霊感をチェック出来るという例のゲームについて、他に何か噂話はないかと調べているのだ。

「玄関の戸を叩くのは、『家の主に失礼にならないため』とありますけど、まるでそこにナニかが住んでいるという怖い想像をかきたて、余計に怖さが増しますね」
「そんなことも書いてあるのか?」
「『霊感があるか手っ取り早く分かる方法』ってことで、今の学生さん達にもまぁまぁ人気があるみたいです。やっぱり、肝試し的な怖いモノ知りたさなんですかね?」

 その間にもタクシーは、見慣れない殺風景な町を進み続けていた。交通量は少なく、時々信号に引っ掛かるものの、車はスムーズに進んでいる。


「あんまり、遊び半分でそういうのに足を突っ込まない方がいいよ、お客さん」


 突然、運転手が口を聞いて、私とミサナはビクリとしてしまった。