「違和感を覚える構造だと、話の雰囲気もあって印象に残りやすいんだ。『他に部屋が見えても絶対に寄り道しない』とかいう注意事項なんて、まるでそうなるよう仕掛ける暗示みたいだ。僕はね、そういった類《たぐい》のモノも嫌いだ」

 私と彼女は、宙を睨みつけつつ話す彼のそばで、思わずこっそりお互いの顔を見合ってしまっていた。ただの小学生である私達には、やはり彼の言う言葉は少々難し過ぎた。

「隼巳君は、もう少し考えて行動した方がいいと思う。幽霊を信じない僕だって、こっくりさんは警戒してる。――何故ならこの世には、僕達の知らない恐怖だって少なからずあるだろうからね」

 それきり、彼は考え込むように黙り込んでしまった。

 私は、賢い彼が「この世には自分たちの知らないような恐怖がある」と告げた事で、本当にそんなことがあるのではないかと思って、なんだかじわじわと怖くなってきた。

             ◆◆◆

 タクシーの車窓から流れる田舎の風景を眺めながら、私はしばしそんな事もあったなと過去を思い返していた。それは、隣にいるミサナが口を開いたことで終了となった。