しばらくすると、集まる約束をしていた午後五時の鐘が公園まで聞こえてきた。

 ちょうど私は中央のブランコに座っていて、彼女がその左隣でブランコを漕ぎ、彼が私の右隣のブランコに腰かけて本を読んでいた。公園の出入り口を確認してみたものの、隼巳と天然パーマの男の子、そして眼鏡をかけた小さい男の子はまだ来ない。

 実は来ないんじゃないかという心配はなかった。いつだって彼らは、少し遅れてやってくるのだ。だからいつも私達は、待つかたわら三人で過ごしている事も多かった。

 午後五時の鐘が鳴り止むと、彼が本から目を上げて「陽が傾いてきたね」と言った。ぼんやりと空を見上げていた私は、雲の形を動物に見立てながら「うん」と曖昧な返事をし、ブランコに飽きた彼女が「まだ明るいわよ」と答えながら木の棒で砂地に線を引く。

「しっかし、隼巳君は何が楽しくてあのゲームをしたがるのだろうか。僕にはまるで理解し難い」
「うーん、多分、君が本を読むことと同じじゃないのかなぁ……」