「嫌よ。※※※君と一緒がいい」

 スカートをぎゅっと握った彼女が、私の後ろからそう言い返した。その声は震えていたが、彼女なりに一生懸命主張するような強さがあった。

 それを聞いた彼が、小さく降参のポーズを取った。気持ちを尊重するように無理には説得を続けず、「なら仕方ないね」と言って、やんわりとした視線を私の後ろに投げて寄こす。

「※※※君の右隣は、もう僕だと決まっているのだから、君はその左隣で文句はないだろうね? 僕だって正直乗り気ではないのだが、※※※君は断われない性質だから、怖がりな彼に付き合ってやろうと思ってね」
「ええ、それで構わないわ。だって皆で円を作って手を繋ぐんでしょう? それだったら、きっと怖くないと思うもの」
「怖くない、ね。それはどうかな。皆でいるからといっても、自身が感じる怖さが軽減するかどうかはまた別の話だよ。わざとらしいくらい色々と約束事が付けられている『心理ゲーム』みたいだからね」

 彼はそう言って、怪訝そうに鼻を鳴らした。