「そして彼は、君が止めるのもきかずに懐中電灯とビデオカメラを持って、家を出て行ってしまったわけだね?」
「はい。……そうして、その後、父の事故の知らせが入ったんです」

 隼巳は、その日に死んだ。
 彼が運転する車は、高速を降りてすぐのトンネルの途中で、急カーブを切って勢いよく壁に衝突するという事故を起こした。

 助け出そうと車を止めて駆けつけた人達、それから後になって駆け付けた警察関係者らも、車内の光景を見てゾッとしたらしい。車体の損傷はそれほどひどくなかったものの、隼巳の首は、一目で絶命していると分かるくらいキレイに捻じ曲がっていたのだという。

「電話でもお伝えしたように、父さんは壁に激突するよりも前に絶命していたそうです。でも、有り得ないでしょう……? だって私が教えてもらった死亡時刻が正しいとすると、約数十分という道のりを、死体が運転していたということになるんですから」

 語るミサナの声は震えていた。

 再びそれを聞かされた私は、やはりゾッとしてしまった。