それを行った場所は、いつも通っていた寂れた公園だった。黄昏の濃い茜色が景色を染め上げていて、秋も始まっていないのにねっとりと手足に絡みつくような肌寒さがあった。

 だがはしゃいでいた我々の中で、一人だけ困惑している者がいた。
 彼は私達の反応を見て、ますます戸惑っているようだった。そして確認するように、こちらを窺いながらこう言ってきた。


「あそこに、誰かいたよ」


 君たちは見なかったのか。僕は、腕を掴まれたんだ……

 興奮の熱が、すうっと逃げて場を沈黙が支配した。

 しばらく経ってようやく、まさか、冗談は止せよ、と二人がどうにかといった様子の声を出した。私達の表情で『自分以外は誰もソレを見ていない』と察した彼の顔色が、途端に蒼白色に変わって、ぶるぶる震え始め「本当だよ」と口にしてくる。

「逃げられないって言われたんだ……。どういう事だろうか……?」

 そう言うと彼は、助けを求めるように我々を順に見た。
 照りつける茜色が、やけに陰りを帯びたおぞましいモノに感じられた。