「父さん、ずっと怖がっていました。だから私もちょっと心配になって、ずっと頭の片隅に残っていた件でもあったというか」

 大切な人を失った悲しみは癒えていない。そんな思いが滲む不安げな表情を見て、私はすぐに返す言葉が見つからなかった。もしかしたら、私の方こそ神経質になっているのかもしれない。

「お母さんから聞いた話だと、お父さんは何かから逃げるみたいに上京して、当時の友人だったり知り合いとはほとんど連絡を取らなかったらしいです」
「ふむ……とはいえ私は、十二歳で引っ越したから連絡先を交換していなかったんだよなぁ。だから彼が高校卒業後に、すぐ結婚していることも知らなかった」

 幼馴染の女の子と男の子に関しては、行方不明と事故死だ。オカルト的な死に結び付けた事はなかったから、私はその後の隼巳の話を聞いた当初は意外に思ったものだ。

「でも君が電話で話してくれた内容だと、他の二人とは連絡を取っていたんだろう?」