「玄関から足を踏み入れると、そこには左右に伸びる廊下が横たわっている。それを私達は、必ず時計回りに歩いて、出発地点であるその玄関まで戻って来る」
「廊下の左側に、正方形の窓が並んでいるのを確認しながら時計回りに真っ直ぐ進む。廊下の反対側から行ったり、途中で引き返したりしたら絶対に駄目――ですよね?」

 ミサナは、確認するように言って私を見た。それが決まりだと伝えるように頷き返してやると、「でも、それってすごく変な【家】ですよね?」と疑問を口にする。

「結局のところ、その【家】は『玄関』と『廊下』と『窓』しかないわけでしょう? そもそもハッキリとそれを想像しなければならない、だとか、絶対こうしなくてはならない、という決まり部分についても、私としては何かしらの暗示っぽいなぁと思うんですよねぇ」

 子供騙しみたいなものですからね、と彼女は肩をすくめて見せる。しかしその顔に浮かんだ苦笑は、怖さも覚えているのが見て取れて言い訳のようにも聞こえた。