随分年月が過ぎてしまったせいだろうか。そう疑問を覚えた私は、ふと、彼女がいなくなってしまった後の青い屋根の家が脳裏に浮かんだ。

 あの日は、どんよりとした曇天で一日が明けた。大粒の雨が降り始めた頃には、いなくなった彼女を捜すため沢山の大人達が懐中電灯を持って外に出てしまっていた。

 隼巳の父が捜索隊のリーダーを務めていたから、私達四人は、彼の家の前で傘を持ったまま立ち尽くしていた。そうやって、みんなで彼女の無事を待って帰りを待ち続けた。

 でも多くの人間が捜索にあたったが、とうとう彼女は見つからなかった。そうしたら以前公園でぶるぶると震えていた男の子が、ひどく怯えた様子でこう呟いたのだ。


『彼女もきっと、腕を掴まれてしまったのだ』


 次はきっと僕の番だ。そう恐怖したように呟いたかと思ったら、君達は本当に見なかったのかと、彼はどこか追いつめられた様子で私達に訊いてきた。心当たりはまるでなくて、私達はそれぞれが困った顔をして首を横に振る事しか出来なかった。