「父からは、すごく仲が良かったと聞いてますよ」

 タクシーを探しながら、隼巳の娘であるミサナがそう言った。思い返していた私は、「ほとんどの時間を一緒に過ごしていたよ」と相槌を打った。

 私達は、とても仲が良かった。私は幼い頃から人見知りだったのだが、隼巳ら三人の少年メンバーが引っ張って面倒を見てくれて、そこに彼女も加わるようになったのである。

 田舎町という事もあって、親同士の仲が良かったせいでもあるのかもしれない。それから私達は、用がなくとも集まり、そうやって五人で一緒に過ごすのが当たり前になった。

 彼女がいなくなったのは、本当に突然だった。

 あんなに大切だったのに、私はどうしてかその名前を思い出せないでいる。

 長い黒髪が艶やかだったのを覚えている。ワンピースからは、小枝のように細い手足が覗いていた。赤みのある頬はふっくらとしていて、彼女は漆黒の大きな瞳で私を見上げて――


『※※※君』


 私を呼んでいた彼女の声が、ノイズが混じったように思い出せないでいる。