父は母の葬儀から数週間も経たずに、また新たな土地へと引っ越していった。隣の県の新しい住所が載ったハガキには、達筆で『何かあれば訪ねなさい』とだけ書かれていた。

 これといって勉強は好きではなかったが、父に言われる前から大学に進学する意思は持っていた。友人達からの話もあって、今よりも校則に縛られない自由や楽しみが溢れているような気がしたのだ。

 だが高校三年生の春、その時になってようやく大学の詳しい資料を見て進学が躊躇われた。そこに記された入学金や授業料といった金額は、なんとなくの気分や高校生活の延長での「遊べる」という感覚で入学するには、とんでもないほど高くつくものだった。

 今も金がかかっているのではと、高校生としていられている自分の授業料や寮代、毎月の仕送りや携帯代金などといったお金についても考えさせられた。そうすると母のいなくなった今、一人で生計を立てる父の身が気になって、じっとしていられなくなった。