それでも、名字を変えたとしても故郷は忘れられなかっただろう。

 自分が続けるはずだった島での仕事と、そこに置いて来たすべてに想いを馳せて――そして、父はずっと自分の住み処を探し続けたのだろうか、と、アラタはそんなことを考えてしまった。

          ◆◆◆

 沖縄までは、飛行機で二時間もかからないフライトだ。けれどシートに腰かけると、アラタは慣れぬ旅への緊張からか、すぐに浅い眠りへと引き込まれていった。

 そこで見たのは、いつもの夢だった。

 吸い込まれそうなほど、澄んだ青空が夢の風景の中で膨らんでいる。

 右手に小島を置き、空と交わる彼方まで浅い海が続いていた。遠く向こうには青い地平線が広がっていて、彼は今、立派な水牛の背に乗ってゆったりと揺られている。

 水牛の固く柔らかい体毛は、明るい日差しに照らされて艶々と輝いていた。浅い水面はキラキラと輝いて、青やグリーン、エメラルドの鮮やかな色彩を幻想的に映えさせている。水牛が足を出すたび背中の筋肉が動いて、アラタの身体を一定のリズムで揺らす。