「斎藤……? 一体どうしてここに――」
「先生、せんせぇ…………っなんでココにいるの」

 見知らぬ者しかいないと思っていた地で、約二年ぶりの再会をはたしたアケミは、強張っていた身体から一気に緊張が抜けてボロボロに泣いた。

「……先生、どうかお願い…………助けて」

 この子を失いたくない、と涙で押し潰されそうな声で言った。

 頭の中はいっぱいいっぱいで、アケミはもう頼るべき人間を他に知らなかった。宮良はしばし沈黙し、――それからたった一言「分かった」と答えた。

「俺は、この人を連れてヤマトに行く」

 彼は、駆けつけた大浜達にそう静かに断言したのだという。

 松子のもとへ友人たちが向かい、時間を稼いでいる間に大浜が船を出した。彼らは一見すると、鉄仮面にも見える宮良の人の良さをよく知っていた。宮良(かれ)はきっと、子供が自分の手をすっかり離れてしまうまで、ココへは帰ってこないだろう、と――。

「新たな命、……アラタ。この子は、斎藤アラタだ」