とはいえ、その前にやらなければならないことがある。

 そう考えながら、ナナカから手を離した。準備してあった鞄を取ると、通りすがり棚の上に置いてある鍵を指先に引っ掛ける。

「俺、ちょっと沖縄に行ってくるよ」

 肩越しにチラリと振り返って、そう声を掛けた。

 そのまま靴を履いて玄関から出た。直後、「は」という間を置いたナナカの、「どういうことおおおおおお!?」という色気のない素っ頓狂な声が上がった。

          ◆◆◆

 アラタは空港へと向かう途中、父の葬儀の際に教えてもらっていた大浜の番号に電話をかけた。ちょうど船作業も終わってのんびりしていたところだったらしい大浜は、急きょ取れた飛行機の便の時間を改めて確認すると、那覇空港まで迎えに行くよと言った。

 沖縄へと飛び立つ飛行機の時間まで、しばらく時間があった。大浜は折り返しの電話で、その待ち時間を利用してアラタが知りたかったことを、順を追って話してくれた。