起こしてくれるのは有り難いのだが、授業のない日も正午前にはやってくるのである。

「とっとと起きなさい! カビとキノコが生えても知らないわよ!」

 そう言って、寝坊癖が取れるまで問答無用でアラタに掴みかかって叩き起こした。家事を手伝ったり買い物がてら歩いたり出来るのが嬉しいようで、いつも楽しそうにしていた。

 気分は低迷のままだったが、おかげで寝坊癖は七月の下旬にどうにか抜けてくれた。
 だというのに朝一番、ベッドで寝ている人様の身体の上にダイブしてきたりする。そもそも男一人の部屋に、堂々と入ってくるのはいかがなものだろうかとアラタは思う。

「…………ナナカ、俺、もう寝坊なんてしてないだろ」

 またしても「おーきーてー!」の声の直後、身体への衝撃を受けて目覚めたアラタは、上に乗っているナナカを軽く睨みつけた。

「なんか、こういうアラタが見られるのも新鮮で」
「味をしめたみたいに言うな。それから人の上でくつろぐな」
「ふふふ~、もしかして照れてる?」

 ニヤニヤと優越感で問われて、寝起きのアラタはピキッと青筋を立てた。口角を少しだけ引き上げて「ほぉ?」と低い声で呟くと、「え」と固まった彼女の頬に手で触れた。