そういえば携帯電話を忘れていったんだっけ、もう充電は切れているだろうな。授業が少ないから、四月なんてほとんど休みじゃんって友達と笑って話していて。ああ、そうだ。三年になったら何泊か遊びに行こうって、ナナカたちと予定を考えている真っ最中だったんだ。それから、それから……。
その時、小さなテーブルの上に置かれた、一枚の書きかけの手紙がアラタの目に留まった。一週間と少し前、初めて父宛てに書き出そうとしていた手紙だった。真新しい便箋には、過去のアラタによる手書きの文章がぎこちなく並んでいた。
――父さんへ、元気ですか。
俺は、先日、無事に大学三年生になりました。
学費は無理しなくていいよ。
学校独自の奨学金制度があるって聞いて……――
そこで文章は途切れている。先週の夜、病院から知らせを受けた際、ペンを放り出してアパートを飛び出したのだと、アラタはようやく思い出した。
途端に身体から力が抜け、そのまま床に膝を落としてしまった。テーブルへと四つん這いで進み、震える指先で、書き途中のままの手紙を引き寄せる。
その時、小さなテーブルの上に置かれた、一枚の書きかけの手紙がアラタの目に留まった。一週間と少し前、初めて父宛てに書き出そうとしていた手紙だった。真新しい便箋には、過去のアラタによる手書きの文章がぎこちなく並んでいた。
――父さんへ、元気ですか。
俺は、先日、無事に大学三年生になりました。
学費は無理しなくていいよ。
学校独自の奨学金制度があるって聞いて……――
そこで文章は途切れている。先週の夜、病院から知らせを受けた際、ペンを放り出してアパートを飛び出したのだと、アラタはようやく思い出した。
途端に身体から力が抜け、そのまま床に膝を落としてしまった。テーブルへと四つん這いで進み、震える指先で、書き途中のままの手紙を引き寄せる。