はたして、自分にそんな事はあったのだろうか。彼女の思い出話に重なるような出来事に覚えがなくて、アラタはこれまで疑った事もない自分の記憶に不安を覚えた。
信じていたものが脆くも崩れ落ちていくような怖さを感じて、アラタはただただ純粋に彼女の手を握り締めた。愛だとか恋だとか、そういうことはよく分からないけれど、一番に心が安らげるのは彼女の隣だった。
「少し、こうしていてくれないか」
ピタリと寄り添って座った。
男としては弱さを出したくはない。でもただの甘えだと分かっていても、今は肩越しに触れ合う温もりと、繋いだその手を離したくはなかった。二人でいれば、大切なことがどこかで擦れ違っているという不安と恐怖が、少しは薄れてくれるような気がした。
ナナカは神妙な顔をして、「うん」と頷いた。自分からもアラタへと身を寄せて、その肩に体重を傾ける。
「あたし、アラタが『もういい』って言うまでここにいるよ。大丈夫だよ」
二人分の呼吸を聞きながら、お互いの手をぎゅっと握りしめ合った。どうしてか繋ぎ合った手かに何蚊が込み上げて、アラタはそのまま親友のような彼女の額にキスを一つ落とした。祝福を祝うように、神様に助けを請うように、そっと触れるばかりのキスだった。
信じていたものが脆くも崩れ落ちていくような怖さを感じて、アラタはただただ純粋に彼女の手を握り締めた。愛だとか恋だとか、そういうことはよく分からないけれど、一番に心が安らげるのは彼女の隣だった。
「少し、こうしていてくれないか」
ピタリと寄り添って座った。
男としては弱さを出したくはない。でもただの甘えだと分かっていても、今は肩越しに触れ合う温もりと、繋いだその手を離したくはなかった。二人でいれば、大切なことがどこかで擦れ違っているという不安と恐怖が、少しは薄れてくれるような気がした。
ナナカは神妙な顔をして、「うん」と頷いた。自分からもアラタへと身を寄せて、その肩に体重を傾ける。
「あたし、アラタが『もういい』って言うまでここにいるよ。大丈夫だよ」
二人分の呼吸を聞きながら、お互いの手をぎゅっと握りしめ合った。どうしてか繋ぎ合った手かに何蚊が込み上げて、アラタはそのまま親友のような彼女の額にキスを一つ落とした。祝福を祝うように、神様に助けを請うように、そっと触れるばかりのキスだった。