大学生活は楽しかった。入学式の後日には新入生歓迎会があり、サークルの新規部員の獲得合戦も盛り上がって賑やかだった。新しい友人もどんどん増えて日々は充実していたが、寂しさに似た愁いが、心の片隅にひっそりと居座って離れないでもいた。

 部屋の棚の上の写真立ての中には、父と大浜と三人で写った入学式の写真が飾られている。思ったら即行動の大浜による提案で、通りすがりの人によって撮影された一枚だ。

 入学式に着流しで現れた父は、写真の中でわずかに微笑んでいる。

 その笑顔は穏やかで、はっきりとした顔立ちの中に青年時代の名残が見えるようだった。どちらも彫りの深い顔をしているせいか、どことなく大浜と同故郷なのだという雰囲気を感じさせた。

 こんな風に笑う人だったのかと、父の微笑みがアラタの中に強く残されていた。チラリと目を向けた時、父が「よく学び、良き大学生活を送りなさい」と言って、ほんの少し穏やかな眼差しを浮かべられて、胸に込み上げる熱いモノがあった。