ホテルの一室で、『合格祝いの会』と題して乾杯をし、買いこんだ食べ物を口に運んだ。大浜はかなりのハイペースで酒を飲んでいくものの、焼けた肌が赤らむばかりで酔っぱらう様子もなく訛り交じりのハキハキとした口調で話し続けていた。
よく飲んで、よく食べて、それでいてよく止まらないなと感心するくらい喋る男だ。けれど気軽にぺらぺらと話す大浜が、肝心なことや重要なことは何一つ口にしない、口堅いところがある事にアラタは気付いた。
酒の入っている状態でも、大浜の目は揺らぎのない強い意思を思わせた。こうして話しながらも、結局は大浜や父についてほとんど何も知らないままだ。
ようやくそう気付いたものの、その頃にはすっかり酔いも回ってしまっていた。アラタの意識はしだいに薄らいで、現実的な五感もあやふやになって瞼も重くなる。
身体がぐらぐらと揺れて、自分が水牛に運ばれているのを感じた。
潮の香りが鼻についた。ああ、またあの小島と水牛の夢だ。自分はまたしても大きな立派なその牛の背に乗り、浸る程度の海の上をどこまでもゆったりと進んでいく。その前を別の水牛が歩いており、そこにはピンと背筋が伸びた男の背中もあって――。
ふっと浅い眠りから覚めると、ベッドの上だった。風呂から上がったらしい大浜が、半ズボンだけを着て上半身の盛り上がった筋肉を晒している姿が目についた。その胸板もまた、見事なほど赤みかかった褐色をしている。
よく飲んで、よく食べて、それでいてよく止まらないなと感心するくらい喋る男だ。けれど気軽にぺらぺらと話す大浜が、肝心なことや重要なことは何一つ口にしない、口堅いところがある事にアラタは気付いた。
酒の入っている状態でも、大浜の目は揺らぎのない強い意思を思わせた。こうして話しながらも、結局は大浜や父についてほとんど何も知らないままだ。
ようやくそう気付いたものの、その頃にはすっかり酔いも回ってしまっていた。アラタの意識はしだいに薄らいで、現実的な五感もあやふやになって瞼も重くなる。
身体がぐらぐらと揺れて、自分が水牛に運ばれているのを感じた。
潮の香りが鼻についた。ああ、またあの小島と水牛の夢だ。自分はまたしても大きな立派なその牛の背に乗り、浸る程度の海の上をどこまでもゆったりと進んでいく。その前を別の水牛が歩いており、そこにはピンと背筋が伸びた男の背中もあって――。
ふっと浅い眠りから覚めると、ベッドの上だった。風呂から上がったらしい大浜が、半ズボンだけを着て上半身の盛り上がった筋肉を晒している姿が目についた。その胸板もまた、見事なほど赤みかかった褐色をしている。